告知
エンクロウズ村のカイルとボトム村のゼットは、食料の買出しのため王国に来ていた。
王宮前の広場を通過しようとしたとき、兵士が何かを貼りだしているところだった。
ゼット:「今日も暑いな、、、買い物も済んだことだし、一杯ひっかけてから帰らないか?」
カイル:「そうだな、買い物役の楽しみといえば、それぐらいだしな。」
ゼット:「おい、あれを見ろよ、兵士が何か貼り出しているぞ、なんだろうな?」
カイル:「どうせ、罪人の手配書かなにかだろうが情報収集も仕事の一つだからな、読んでおくか。」
ゼットとカイルは、貼紙を眺めた。
ゼット、カイル:「なっ、なんだと!!」
ゼットとカイルは、内容を読んで愕然とした。
二人は顔を見合わせると、周りに悟られないように無言のまま城門に向かった。
告知と書かれた紙には、神の山の民は悪魔の使いであること、悪魔の使いとそれに組する者達を
兵を率いて地に返すことが書かれていた。
城門を出ると2人は、買出し品の袋を放り投げ、ボトム村に向けて走った。
2人は、時々振り返りながら、先を急いだ。
カイル:「これなら兵隊より先に村に着けそうだな。」
ゼット:「我々以外に遠出してる者はいなかったよな?」
カイル:「ああ、我々だけのはずだ。信じるしかない。」
ゼット:「そうだな。」
ゼット:「ところで、カイル、ボトム村に着いたときに、兵士がいなかったらでいいんだが。」
カイル:「どうした?」
ゼット:「お前は、すぐにエンクローズ村に向かうんだ、そしてこのことを皆に伝えろ。
私は、ボトム村の皆に伝える。そして全員をエンクローズ村に避難させてほしいんだ。」
カイル:「なにをいまさら。」
ゼット:「ありがとう、そこで頼みがあるんだ、私の弟と妹をお前につれていってもらいたいんだ。
俺は村の皆を非難させるために動くことになる、そのことを知れば2人は手伝うと言うだろう。
2人には、生きてほしいんだ。」
カイル:「急に何を言い出すんだ、全員生き残るにきまってるだろ。」
ゼット:「そうだな、そのために全力を尽くすつもりだ、だから、2人を頼む。」
カイル:「わかった。」
カイルは、ゼットの覚悟を察した。
しばらくの間、2人は無言で走り続けた。
長い道のりであったが、不思議と疲労を感じなかった。
2人は遠くに村が見えてきた時に、火や煙が見えなかったことに安堵した。
カイル:「なんとか間に合ったようだ。」
ゼット:「なんとかな、、、。」
到着したとき、村は普段と変わらなかった。
ゼットは、カイルの肩を叩きながらつぶやいた。
ゼット:「カイル、2人をたのむ。」
カイル:「わかった。」
ゼットは村に入るなり、走りながら大声で叫んだ。
ゼット:「緊急事態だ!!すぐに村長の家の前に集合してくれ!!」
何度も何度も叫びながら村長の家を目指した。
カイルは、横道に入るとゼットの家を目指した。
ゼットの家に到着すると、勢いよく扉を開けた。
ジェイ:「うぁ、びっくりした。カイル兄ちゃん、いきなりどうしたの?」
カイル:「エルは、どこにいる?」
ジェイ:「裏の花壇で花の手入れをしてるよ。」
カイル:「緊急事態だ、すぐに洞窟に向かう、一緒に来い、走るぞ。」
ジェイは、カイルのただならぬ気配に気圧され、一回身震いすると、
目の前にあったエルお気に入りの人形を掴み、カイルの後について走った。
カイルは、裏の花壇に向かうと、エルを抱きかかえて走り出した。
エルは、なにが起きたか分からなかったが、抱きかかえた人物がカイルであること、
そして、後ろから兄が走ってきていることで、黙って従うことにした。