こわいひとにはこわいかも、こわくないひとにはこわくないやん、な実体験
足
子供の頃の話。
家を建て替えたばかりだから、小学3年生の時だ。
その日、私はなかなか寝付けなくて、ベットの上で何度も寝返りをうった。
目を閉じて、ごろごろしているのにもいい加減で飽きて、目を開けた。
天井が目に入る。
当たり前だ。
でもその日は、当たり前じゃないものがあった。
足だ。
膝小僧からちょっとした、ちょうど弁慶の泣き所あたりから、二本の足がにょっきりと生えていた。
子供というには大きくて、大人というには細い足が二本、こちらに踵を向けて生えている。
しかもどういうわけだか、その足は両方とも右足っぽかった。
くるぶしが右方向にあるのだ。
しばらくの間、じー・・・とその足を見詰めていたけど、何も起こらなかった。
そのあとの記憶はあやふやで、なんか気が付いたら寝てしまっていた。
いつものように、兄の目覚ましで起こされて隣の部屋に怒鳴り込んで、オシマイ。
家族になにか不幸があったとか、足を怪我したとか、期待するような事は何もなかった。
さて、小学三年生の時期といえば、『口裂け女』伝説の他にも、こんな怪談話が小学校で流行っていた。
国道で、女の人が事故にあった。
足をグチャグチャにされて、引きちぎられた。
ひき逃げされた女の人は、救急車が到着するまでは生きていたけれど、間もなく亡くなってしまった。
その女の人は、死ぬまでつぶやいていたという。
ワタシノアシヲカエシテ・・・・・
その次の日から、ぐしゃぐしゃになってちぎれてしまった足が、女の人を探して、夜な夜な徘徊するようになった。
この話を聞いた人の家には、三日以内に、その足が訪れるという。
もしもその足を見てしまったら、こう三回呟けば、足は帰ってくれる。
国道〇〇号線にお帰りください。国道○○号線にお帰りください。国道○○号線にお帰りください。
ただし、私が夜中、天井からぶら下がる足を見たのは、この怪談話が流行る前のことだ。