(File5)リーフの暗号③
新しい友だち(4)
・イトウ
・にいさん
・ムイミ
・とうさん
リーフのスマートフォンには4名が登録されていた。
しかしこれでは、ひとりだけ足りない。
いったいなぜだろう。
なにか秘密があるのだろうか。
しかし悠長に推理ばかりもしていられない。
下痢のほうもそろそろ限界だった。
西村は便器にまたがり、警察を呼んだ。
念のため暗号のことも伝えておいた。
西村はパーティー会場に戻り、なんとはなしに彼らの首かけカードを観察してみた。
【島崎鳴海、女性、2月3日生まれ。趣味:裁縫】
【瀬波小春、女性、6月13日生まれ。趣味:料理】
【細川守、男性、10月3日生まれ。趣味:野球】
【岩井香苗、女性、7月4日生まれ。趣味:読書】
そしてリーフが彼らにつけたあだ名は。
【にいさん】
【むいみ】
【とうさん】
リーフ(?)の暗号は。
【十二、3、H、10、9、0。7、4、2、5、6、3、0、3】
そして確実な判断材料が2つ。
【西村京三郎、男性、1月10日生まれ。趣味:写真撮影】→”イトウ”
【中山和也、男性、8月8日生まれ。趣味:四則演算】→”リーフ”
これらをもとに推理を組み立てると――。
「そういうことだったのか」
ボソッとつぶやいて、西村は再び体育館を離れた。
西村は受付に行って、受付名簿を借りた。
予想通り【なかやまかずや】と、平仮名でリーフの本名が記入されているページがあった。
しかし字体がかなり崩れていて、判読するのも一苦労である。
「やっぱりそうだったのか」
受付嬢に礼を言って、西村は外に出た。
「犯人は【イトウ】【にいさん】【ムイミ】【とうさん】じゃない」
パトカーの到着を待ちながら、
「犯人は【ナシ】だ」
西村は言うのだった。
「この前はどうもありがとうございました。西村さん」
山村刑事が深々と頭を下げ、
「やあ、お久しぶりですね。西村さん」
内田警部は手を上げて、ほほえんでみせた。
「いえいえ。こちらこそ、前回の事件ではご迷惑をおかけしました」
西村は丁重にお辞儀をして、刑事を出迎えた。
「それで、殺害現場はどこかね?」
内田警部の質問に対し、
「こちらですよ、警部」
と、西村は余裕の表情。「謎はすべて解けました」
「いちおう、暗号というのを見せてもらおうか?」
2階のトイレに到着すると、鑑識が写真撮影を行っているところだった。
「ええ、構いませんよ」
西村は両刑事に、スマートフォンの画面を向けた。
【十二、3、H、10、9、0。7、4、2、5、6、3、0、3】
「内田警部、これはどういう意味でしょうか?」
「むう、わからん」
「わからないのも無理はありませんよ。これは暗号ですから」
そう言ってスマートフォンを片付ける西村。
「これから私が解説しますので、よく聞いていてください」