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鉄道警察隊、西村のスイリ。  作者: オリンポス
【4回目のスイリ】
5/46

(File3)リーフの暗号①

 鉄道警察隊の西村は、県が主催するお見合いパーティーに参加することになっていた。


 彼としてはまだ独身貴族を謳歌していたかったが、世間体や親の苦労を考えると、そろそろ身を固める決意をしたほうが良いのかもしれない。


 しばらくそんなとりとめのないことを考えていると。 

 いつの間にか――目的地に到着していた。


 西村はタクシーの運転手に料金を支払い、会場を見上げてみた。

 複合ビルの6階建て。築年数はさほど経過していないようで、真新しい建造物だった。


 西村はその会場に入った。

 1階のロビーへ行くと、受付嬢が2名並んで待っていた。


 西村は差し出された受付名簿の欄に、『西村京三郎』と漢字で記入した。

 すると首かけ用のプラスチックのカードと、番号札を渡された。

 首かけ用カードには、【西村京三郎、男性、1月10日生まれ。趣味:写真撮影】とある。


 そのまま進んでいくと大体育館があった。


 どうやらこの1階は、業務用では使わないらしい。


 入ってみると、各テーブルごとに立て札が置いてあり、それぞれ番号が書かれていた。


 西村は受付でもらった番号札の席へと向かった。

 そこには男性2名、女性3名がすでに来ていて、ワインやらソフトドリンクやらを飲んでいる。


 西村のスペースにも皿とグラスが置かれていた。


 椅子がないところをみると、どうやら立食パーティーのようだ。


「お待たせして、申し訳ありませんでした。恐縮ながら私から自己紹介をさせていただきます」


 西村はほとんど首かけ用カードのプロフィール通りに語った。


「じゃあ次は私が行きます」

 はい、と手を挙げて。 

 西村の隣にいた女性が順番を引き継いだ。

「私は島崎と言います。趣味はお料理です。よろしくお願いします」


「次は私がやるわ」

 むすっとした無愛想な女性は。

「私は瀬波。言っとくけど私は、島崎の付き添いできただけだからね。あんまり下心とか向けないでよ」


「我輩は細川と申す者である。ここはひとつ、無礼講で行こうと思っておりまする」

 マッチョの男性はおごそかに言った。


「私は岩井。趣味は読書。寡黙で人見知りなので、積極的に絡んでもらえると嬉しいです」

 華奢な身体つきをした女性は、静かな口調であった。


「ぼくはリーフ。趣味は、四則演算。よろしく」

 中肉中背の男性はどこかに視線をやりながら、自己紹介を終えた。




 ――楽しい立食パーティが始まった。




「へー。西村くんって、警察官なんだ。すごーい」

 島崎は西村に笑顔を振りまくが、

「すごいですよね。この蟹グラタン、ズワイ蟹使用ですって」

 西村はほとんど見向きもしていなかった。

 もちろん性的な意味で、である。

 ――そっぽを向いていたわけではない。


「私はどんな仕事してると思う?」

 島崎が訊く。

「ボーイ」

 西村が答える。


「えっ? ボーイ……。なんでボーイなの? 私、男じゃないんだけど」

 もじもじしている島崎を尻目に。

「ワインをもう一杯ください」

 なんてやり取りを、西村はボーイとしている。


 この人はなかなか手強いな。

 しかし――がぜん、燃え上がる島崎であった。




「イトウくん。はじめまして、ぼくはリーフ。よろしく」

 西村は当初。

 自分が呼ばれているのだとは気付かなかった。


 なぜなら。

 西村はそもそもイトウという苗字ではないし、そう名乗ってもいないからだ。


 だが自分が呼ばれているのだとわかった西村は。


「よ、よろしく。リーフくん」

 と、ぎこちなく返事をした。


 その際にちらりと彼の首かけ用カードをのぞくと。


【中山和也、男性、8月8日生まれ。趣味:四則演算】とあった。


 彼の名前はリーフではなかった。

 ではなぜ、リーフと名乗ったのであろうか。

 そしてなぜ中山リーフは、西村を”イトウ”と呼んだのだろうか。

⑤まであります。よろしければ、それまでお付き合いください。

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