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鉄道警察隊、西村のスイリ。  作者: オリンポス
【11回目のスイリ】
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(File34)鎌田正信の殺意③

 鎌田正信は、車掌室へと走って行く男性を見送っていた。

 余計なことをしやがってと思うが顔には出さない。

 あくまでも澄ましたスマイルで乗り切らなくてはならない。

 疑われては一貫の終わりだ。


 しかし、ここでネックになるのが、通信抑止装置を起動し続けていることだった。


 こんなことをしていれば、少なくとも、この車両にいる乗客には影響があるはずだし、"だれかが電波を違法にジャックしている"とまではいかないものの、不審に思う人物が多数出てくるはずだ。それによって、いつ証拠物ブツが摘発されるか分かったものではない。

 早急に始末してしまいたいが、そうも言えない事情があった。


 鎌田正信は手の平に汗をにじませながら、妨害電波を"強"にする。


 先程の男性はもう少しで、車掌を連れて来るだろう。

 もしもそうなったら計画がご破算だ。

 せっかく停車駅の少ない特急列車に乗ったのに、最寄りの駅で緊急停車することにでもなったら始末に負えない。

 それにもしもこの犯罪が露見してしまったら――情状酌量の余地は認められるだろうか、執行猶予判決は得られるだろうか。そんな不安が湧いてくる。


 いやいや、逮捕されると決まったわけじゃないんだ。もっと自信を持とう!


 そう頭を振って策を練る。

 そういえば超高周波モスキートを流したとき、南拓実少年は頭痛を訴えていた。

 それは若年者の耳膜にしか響かない特殊な音源だが、もっとボリュームを上げて聞かせてやれば、他の子ども達にも伝染し、ある種のパンデミックを起こせるだろう。


 そうなれば話が早い。

 この国では鉄道を利用した化学テロが起きている。

 だから、サリン、ソマン、タブンなどのG剤、マスタードガスやルイサイトなどのびらん剤への警戒は国際的にもトップクラスだ。

 その可能性を示唆した上で、一部の車両から集団頭痛が発生すれば、すべての車両に渡って、神経ガスの有無を確認しなけれならないだろう。

 そうなれば甥の治療は遅きに失することになり、若き命を華麗に散らしてくれるはずだ。


 さて、そうと決まれば、モスキートスイッチオン!

 鎌田正信は意気揚々と電源を入れて、頭痛の演技による準備を行った。


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