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鉄道警察隊、西村のスイリ。  作者: オリンポス
【6回目のスイリ】
17/46

(File15)西村くんのスイリ対決②

『第一問。

いえのほいけ

(寝癖をなおして考えろ)』

 プラットホームで乗降客による雑踏を掻き分けながら、西村少年はあてどもなくさまよっていた。


「いえのほいけ。けいほのえい。ienohoike.ekiohonei.えきおほねい。

 …………寝癖を直して考えろ。寝癖、癖? いえのほいけ。家のほ池、家のお池? 池ってなんだ? 池袋のことかな」

 ぶつくさ言っているうちに、西村少年はホームの端っこに着いてしまった。

 そこには簡易トイレと階段があるが、他にはなにもなかった。


 電車が滑り込んで来たが、止まらずに通過してしまう。

 どうやら快速列車だったらしい。


「そろそろ帰ろうか?」

 親子連れがトイレから出てきた。

 小学生くらいの男の子と、その父親らしき男性だ。

 時刻はまだ朝方で、太陽が眠そうな空に向かっていくところだった。

「もう帰ろうよ。おじさんの家、もう飽きた」

 男の子は頬を膨らませている。

 まあここは田舎町だし、子どもには退屈なんだろうな。などと大人びたことを考えながら、西村は親子に目を向けた。


「帰ろうか、もう帰ろうよ。

 期せずしてあの有名な邦楽の歌詞みたいになったな」

 父親はおかしそうに笑ったが、子どもはキョトンとするばかりだった。

 まあ幼い子どもが『home』を知っているわけがないか。西村は微笑しながら目を外した。


「ん? ホーム? ホーム、家……」

 寝癖を直して、考えろ。

 寝癖……か。

 いえのほいけ。

 寝癖は鏡を見ながら直すから……なるほど。

「わかったぞ」

 西村は一目散に駆けだした。

 トイレの洗面所で、手帳に五十音表を書きつけ、鏡に映した。

「この暗号の意味は五十音表で考えて、その対になる文字を答えればよいという意味だったんだ。

 つまり『あかさたなはまやらわ』でいうところの、『あ行』の対は『わ行』。『か行』の対は『ら行』。『さ行』の対は『や行』。『な行』はちょうど真ん中に位置するから、読み方は変わらないといった要領だ。この法則にしたがって解くと……」

 手帳に暗号文を書き写して、頭を整理してから、西村少年は言った。

「ゐゑのとゐれ(→いえのといれ)。家のトイレというのはホームのトイレということ。つまりトイレの周辺に係員がいるということになる」

 トイレをひと通り調べたあとで、彼は先の親子連れに、駅の係員を見なかったか訊いた。

 すると、

「君は受験者だね?」

 父親らしい人物は西村少年のバッジを認めて、照れくさそうに言った。

「ついついヒントを口走っちゃったけど、ごめんね」

 男性は哀願でもするかのように、両手を合わせて謝罪した。

「これが第2の試練だよ。がんばって解いてくれよ」

 プリントアウトされた無機質な紙を寄越すと、例の親子連れはどこかへ行ってしまった。

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