(File12)奇術と推理の対決⑤
<共通項を探せ>
①【愚かなる心や見えんます鏡】
②【ベリリウム】
③【扇】
④【ダイヤモンド】
⑤【松方正義】
<島崎鳴海の予想>
①保留
②4番目(原子記号)
③2番目(季節)
→暑いときに使うから。
④保留
⑤保留
「共通項は4かもしれませんね」
西村は慎重に思索を進め。
その過程を口述していた。
「そしたら③はどうやって考えればいいのかな?」
島崎は興味深そうに訊いた。
「とりあえず4階に行きましょうよ」
山村刑事はどうでもよさそうに言った。
「③はきっと縁起の良い初夢のことですよ――島崎さん。
一富士・二鷹・三茄子・四扇・五煙草・六座頭。
だから【扇】は【4】です」
このように考えれば、以下のように表が埋まる。
①保留
②4
③4
④保留
⑤保留
「ちなみにダイヤモンドは野球用語で、ファースト、セカンド、サード、ホームベースの4つを結ぶ正方形のことですしね」
次々と暗号を解読していく西村。
「⑤の松方正義ですが、どんな人物かわかりますか?」
あまり期待せずに、西村は訊いてみる。
「明治時代の偉い人!」
大きな声で島崎は言った。
意外なことに外れてはいなかった。
「政治家でしたっけ?」
山村刑事は難しい顔をしながら、小さな声で答えた。
「第4代および第6代の内閣総理大臣です。
ここでも【4】という数字が浮上します」
そして、西村は。
この暗号で最難関の①についての解説を始めた。
「愚かなる心や見えんます鏡というのは、増鏡の序文です。
これは、【大鏡】【今鏡】【水鏡】【増鏡】のいわゆる【四鏡】でいうところの、最後の作品です。
だから①も4が当てはまるはずです」
こうして100パーセントの確証を得て。
西村達は4階の屋内駐車場へと向かった。
「あとはアスファルトに【D】とペイントされている箇所を探せば――」
「よお、西村っちご一行さん。早かったじゃんかよ」
東川は自動販売機に寄りかかるようにして、彼らの到着を待っていた。
「どうだい、楽しんでもらえたかな?」
「東川さん。いい加減にしないと、本気でブチ切れますよっ!!!!!」
西村は温度のない目で、東川を睨みつけると。
「いつまでこんな嫌がらせをするおつもりですか?」
静かに怒鳴った。
「なになにっ!? 2人はどういう関係なの?」
突如始まった一触即発の状況に、オロオロとうろたえる島崎。
「まあまあ車に乗ってゆっくり話そうぜ。楽しい楽しい昔話をさあ。なあ、西村っち」




