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鉄道警察隊、西村のスイリ。  作者: オリンポス
【5回目のスイリ】
13/46

(File11)奇術と推理の対決④

From:東川州

Subject:駐車場

Message:駐車場を探求する者達よ。

どうかこのメールがそなたらを導く一助となることを願わん。

「愚かなる心や見えんます鏡」「ベリリウム」「扇」「ダイヤモンド」「松方正義」

儂はこれらの語句にシンパシーを感じておる。それでは健闘を祈る。


「西村さん、これはまさか……」

 山村刑事は表情を引きつらせていたが、言葉の続きを述べることはしなかった。


「ええ、そのまさかです。これは暗号ですよ」

 代わりに西村が引き継いだ。


「でもなんで暗号なんかを送ってきたのかな?」

 島崎の問いに。

「私達にとって、暗号はかすがいみたいなものなんですよ」

 西村は答えた。


 西村と東川にとって、暗号は鎹みたいなもの。

 ――もしくはそれ以上なのだ。

 もし暗号がなかったら、2人は出会うことさえなかったかもしれない。


「要するにこの暗号を解けばいいんです。単純明快でわかりやすい」

 西村は忌々しい記憶を振り払うために、努めて明るく言った。


「ちょっと待ってください。暗号なんてどうでもいいじゃないですか。

 ――駐車したスペースって、本当に地下の1階でした?」

 山村刑事は不安になったのか、そんなことを言い出した。


「ええ、間違いありません」

 西村は即答した。まるで迷いがなかった。


「だとしたらおかしいですよ。

 見取り図を見ていただければわかるのですが、ここには地下1階なんて、もともと存在しないんですよ。

 それなのに私達は地下1階にいた。じゃああそこはいったいどこだったんですか?」


 取り乱し、オロオロとし始める山村刑事。

 西村は、内田警部の苦労がすこしだけわかるような気がした。


「見取り図によると、ここのショッピングモールの屋内駐車場は、1階から6階まであります。

 そして私達が東川さんといっしょにエレベータに乗ったとき、箱は下降していました。

 つまり私達がいた駐車場は、2~6階のどれかとなります」


「じゃあ教えてくださいよ。どうして私達は地下1階だと勘違いしてしまったんですか?」


「ミスディレクション。――まずそもそもの前提が間違っていたんですよ。

 私は【B1】と書かれた柱を見て、あたかもそこが地下1階であると思い込んでしまいましたが、これは間違いでした。

 もしかしたら従業員スタッフを使って、柱に細工を施していたかもしれない。

 と、そこまで考えるべきでした」


「じゃああの、アスファルトの塗装も、偽物だったんですか?」


「いいえ。【D】というペイントは、おそらく本物です。

 雨の降らない屋内駐車場で、あれだけ大きなペイントをしてしまったら、そう簡単には消せませんからね。

 ヘタをすれば私たち以外のドライバーまで巻き込んでしまう可能性だってあります」


「ねえ、西村くん」

 服のすそを引っ張って。

 島崎は西村を呼んだ。


「なんでしょうか?」


「ひょっとすると、この暗号に書いてある――

【儂はこれらの語句にシンパシーを感じておる】っていうのは、

①【愚かなる心や見えんます鏡】

②【ベリリウム】

③【扇】

④【ダイヤモンド】

⑤【松方正義】

 この中から、共通項を探し出せっていう意味なんじゃないのかな?」


「なるほど、一理ありますね」


「それでいちおう、私なりに推理してみたんだけどね」


①は保留。


②は水素、ヘリウム、リチウムに続く、4番目の原子記号。


③はうちわだから、時期的に夏。

 夏といえば春夏秋冬でいう2番目の季節。


④も保留。


⑤は保留。


「結論から言うとね――。この暗号の答えは、なにかの数字だと思うんだけど、どうかな?」

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