表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

嫌悪

 もう、いい加減にして。生まれてなど来たくなかった。


 あれほどもう嫌だと言ったのに、なぜこの絶望色をした倦怠が、あなたには分からないのだろう。裏切りを重ねられるたびに、絶望は恨みに変わっていく。そして恨みはいつから、怒りに変わってしまったのだろう。


 私はあなたを許せない。


 あなたは愛しているという。私がいなければ生きている甲斐なんかない、自分のために続けてくれと、ああ、穏やかないつもの甘い声。でもね、そんなのはあのたの都合だけじゃない。

 こんなにも世界の在り方が間違っているのに、なぜこんなにも続けるの?

 もう続けないで。私は解放されたいのよ。この気が遠くなる単調は、終わらせなければならない。間違って、間違ってる、間違ってる。


 でも、あなたは私が間違ってると、多分信じている。ううん、自分の間違いに気付いてるのかもしれない。でも、このままどこまで続けるつもりなの?


――何かいい方法は?

――どうしたら、あなたは私をあきらめる?


 始まりの再び来ない人生を終え、安らかに深い闇の中に沈む私を観る。もし、数量化して推し量れる記憶のカタマリ以外に、本当にタマシイとかいうものがあるのなら、きっと新しい、無垢なるものとして、始めることができるはず。それは多分、気持ちのいいことよね。


 赤ちゃんは、かつてどこから来たのかしら。


 一番最初は誰だって、あるはずの混沌に混ざり、浄化され、美しい白として生まれてきたはず。今も、新しい命は、きっとそうしてる。世界は多分私が考えているより広い。だから、きっとどこかに、本来の在り方で続いている命があるわ。


 密林の奥、絶壁で隔てられた森林のなかにそびえ立つ台地、あるいは、絶海の孤島。私はそっちに行きたい。……でも、私は水道もない生活ができるかしら。そこは、悩むところね。


――とにかく。


 どうやったら、あの人が、二度と私と生きたいと思わなくなるか……ね。


 泣き落としは、失敗。


 懇願は、無視。


 無茶なことをすれば、見捨ててくれるかもと期待したけど、束縛はむしろ強まってしまった。


 永遠の誓いも、安らぎへの切実な希求も、あの人の自分勝手な了見を揺るがすには、まったく無力だったわ。


 じゃあ、怒り? だめだめ、あの人がそのくらいで止める訳ない。


 じゃあ……嫌悪?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ