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一話
これはオリジナル作品です。
無断転載などしないよう、お願いします。
肌に馴染む風、雲一つない青空、辺り一面に広がる緑。
ここの村はこうして緑に覆われている。
そんな中、一人の少女が空を見上げていた。
肩甲骨辺りまである黒髪は風によってなびいており、どこかの校章だろうか、胸にプリントされている紺色のブレザーに、赤いチェックのスカートに身を包んでいる。
「やっぱり、いいなぁ……ここは」
来てよかった、と心の中で続け、少女は地面においていた重い鞄を持ち上げ、ぐるりと辺りを見回す。
少女の容姿は高校生ぐらいで、どこにでもいるごく普通の少女だった。
しかしなぜ、このような時期に、こんな村に来たのか。
「どこか泊まれる所あるかな……?」
辺り一面緑に覆われ、建物らしき物など見当たらない。
もう一度辺りを見回し、少女―――浅野夏梨は足を踏み出した。