三話
じゃり、と土を踏み潰すように少年は歩いた。
「なかなか、だったな」
口元を歪にゆがめ、少年は言葉を吐き出す。
少年の口元は楽しそうに曲げられているのに、その射るような目は欠片も笑っていない。むしろそれが、不気味と感じさせるほどに。
そしてそのまま、首をひねり後部を見る。
木に覆われている中、浮きだって見える赤い屋敷。さきほどまで、少年がいた場所。
正確には、近くにだが。
けれど、少年にはそんなことはどうでもいい。
鋭い瞳で見るものは、いつも同じものだった。恨んでも恨みきれないほどの。
「このまま行けば順調、かな……?」
あの反応を見る限り、まだ話してはいないのだろう。
何も知らない、ただ困惑の瞳を向けてくるあの少女は、何も教えては貰ってない。
それをしたのは、他ならぬ――。
「愁……」
緊迫した声が聞こえ、少年の足が止まる。
少年の名を呼んだ男は、おずおずと茂みから顔を出してきた。
「ど、どうだったんだよ……?」
「どうって、なにが?」
「なにがって、その……」
言いよどむ男に、愁は瞳を細め喉で笑う。
「まぁまぁだよ。今のところはな」
「えっ?」
歩き出そうとした愁を引き止めようとしたが、伸ばした手は空を切り行き場をなくした。
みるみる遠ざかっていく後姿を、男は半ば呆然と見ていた。