二話
少女は、暗い闇のなか目を覚ました。
浅い呼吸が繰り返され、霞んだ瞳が辺りをさまよう。
夢だったらしい。
あの、恐ろしく、迫るような感覚。
夏梨は深呼吸をして、また双眸を閉じた。
――夏梨がここ最近、この屋敷に来て見る夢はいつも同じものだった。
普段は見ないものを、ここ最近は特に。
彼女の頭を支配するのは、決まって同じだ。
あの蔑んだ瞳、軽蔑するような視線、あからさまな態度。
忘れたくても、それを否定するかのごとく、鮮明な記憶として彼女の中に根づく。
周りとは少し違うということで、自分は孤立していたのだ。
なにも違うところなどないというのに。
だから夏梨は、逃げるようにしてここへ来た。
心を癒すためと、忘れたい一心で。
けれどもこうして夢で見るのであれば、その意味はなかったのかもしれない。
夏梨はぼんやりとそんなことを考え、脱力するように息を吐き出し、ごろりと寝返りを打つ。
うっすらと目を開けると、染み一つない畳が見えた。
逃げようかとは初め考えていた。
でも、ここにいたいと思う理由が出来てきたような気がした。
梶に聞かれた時に、彼女が気付いた少し変化があった気持ち。
徐々に眠気が襲って来、とろとろと目蓋を閉じる。
夢の中へと誘われる瞬間。
彼女の脳裏に浮かんだのは、全身を白く染め上げた、今にも消えてしまいそうな狐だった。