チェーン店
三題噺もどき―きゅうひゃくじゅうさん。
賑やかなBGMが人々を出迎える。
元から流れている、この店専用の音声に加え、夏らしい音楽も重なっている。
店内は涼しく、休憩スペースはご老人で椅子が埋まっている。
「……」
全国チェーン店に来ていた。
大抵どこにでもあるイメージがあるが、以前引っ越した先には無かった。というか、少々距離のあるところにあった。
ここは家から比較的近く、たいして大きくはないが昔からある店だ。以前は違う名前でここに建っていた。車で30分ほどのところに、もっと大きな同じ店もある。
「……」
あまりここに来ることもなくなっていたような気がするが。
というか、そこまで頻繁に買い物に出たり、外出したりすることがそもそもないのだ。
今日はたまたま母が休みで、買い物に連れ出されただけである。
「……」
何を買いに来たのかは知らされずただ母の後ろを歩いている。
目的があるようで、どうやら二階に行くようだ。
エスカレーターに乗り、下に広がる休憩スペースを眺め、行儀の悪い老人を見ては、ああはなりたくないと思い……二階につく。
「……」
まぁ、家にいるよりはマシなんだろう。ここは涼しいし、やっかみを言われることもないだろうし、食事だってとってもいい。あそこに座るおじさんにとってはいい三拍子がそろっているわけだ。……だとしてもあれはないが。
「……」
ここは二階建てで、一階は食料品や医薬品などがメインで、服屋さんもいくつかある。
二階は、服飾がメイン。端の方にはゲームコーナーもある。
季節の物が広い通路に並ぶのだけど、今は浴衣が売られているようだ。少し離れた位置には水着も置いてある。
もう少ししたら、ランドセルになるんだろう。桜の咲くころになれば、ひな人形と兜が並んでいる。
「……」
用があるのは、二階の。
こちらも、全国チェーンのお安いお店だ。
もう何が均一なのか分からないが、比較的安価で手に入るのだから誰もが重宝しているお店だろう。
私も、特にこだわりのない筆記具なんかはここでよく買う。
「あのさー……」
「ん」
と話し始める母に相槌を打ちつつ、探し物をする。
どうやら仕事で何かを作りたいらしく、その材料を探しに来たのだと。
聞く限りここですべてそろいそうだが、在庫切れとかあるだろうからそう簡単にはいかない。大抵はここにあるものしかないんだから。
「あー、あそこじゃない」
それらしきコーナーを発見し、探してみる。
探していると言った母は、別の物を発見したらしくそれを見ている。
私は別に用はないからいいんだけど。
「……」
しかし、お目当ての物はなさそうだ。
開いているスペースがあるから、おそらくここにあったのだろう。
食料品なんかと違って、値札が貼ってあったりするわけじゃないから何とも言えないけれど。それ以外はある辺り、母が作ろうとしているものは流行りの物だったりするんだろうか。
「あった?」
「なさげ」
手に何かを持ちやってきた母にそう応える。
他にも何か所か見てみて、いくつか揃いはしたが、それだけが見つからなかった。
まぁ、他にも同じ店はあるし、似たような店はあるから、そこで探せばいいだろう。
今日は休みなんだから。
「なんかある?」
「いや……」
とりあえず、他の店も見てみることになり、レジをすることになった。
別段、筆記具はそろっているし、予備もある。他に欲しいものもないし、生憎化粧も興味がないのでそんなのもいらない。しいて言うなら、キャラクターグッズが欲しいが、生憎推しがいないのでいらない。
「だいじょー」
ぶ、と言おうとしたのだけど。
そういえば、アレはあの子が好きな奴だったなと思いだし。
それだけを手に取り、レジに向かうことにした。
「なにこれ」
「ゲーム」
そんなことを話しながら、セルフレジで会計を済ましていく。
隣のレジでは慣れない手つきでご婦人が会計をしていた。
慣れればなんてことはないが、まぁ、初めは大変なんだろう。……画面見れば大抵次にやることはかいてあるけどな。
「……レシートは」
「いらない」
レシート不要のボタンを押し、レジ回りに忘れ物がないことを確認し、その場を離れる。
時間が時間なので混むこともないだろうが、さっさと離れるに越したことはない。
ここでもだもだされても困るだけだ。
「とりあえず、あっちに行ってみて~」
まだまだ買い物は続きそうだ。
いつになったら帰れるのだろう。
お題:桜・三拍子・浴衣




