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気になるE子ちゃん!

作者: tyatarou
掲載日:2026/02/13

「なあ、お前なんで今日だけ前髪あげてんだよ」

「関係ねえだろ。お前こそ、なんだよその無駄にでかい紙袋。大して入れるもんもないくせに」


「ねえね、昨日作ったあれ持ってきた?」

「もちろんよ!ラッピングもバッチリ、大起くんの好きな黒でまとめたわ」


「え!ちーちゃんあの人に告白するの?!」

「しー!皆んなに聞こえちゃうでしょ!」

「ついに決心したんだね!」

「まあね。この日の為にお菓子作りも勉強したし、放課後頑張ってくるから結果報告待ってて!」

「うん!応援してるね!」


クラスの皆んな、いいや。

学校中の生徒ほぼ全員が浮かれているのが伝わってくる。

なんて単純な奴らなんだ。

バレンタインなんて、お菓子を貰うだけだろう?

しかも貰ったら返さなきゃいけない。

なんて面倒なイベントなんだ。

お菓子貰うのなら、ハロウィンだって似たようなものなのにこの浮かれ具合。

全く、皆んなお子様なんだから。


O氏「おい。S太よ。その足元に置いてあるダンボールはなんだ?『僕はチョコが特に好きです。どうかお恵みを』って……貴様!」


僕「なんだい」


友達のO氏が僕の机を手で思い切り叩く。


O氏「これは一体なんなんだ!恥ずかしいと思わんのか!」


僕「なにが?それは僕が朝来た時にはすでに置かれていたよ」


O氏「いい加減な嘘をつくんじゃない!男として!情けないだろーー!!!」


ガララッ    バッ!!!


僕「あー!!!何するのさ!」


O氏「どうせひとつも入っていなかったんだ。あんな物ゴミだゴミ!」


僕「だからって窓から捨てるのはダメだよ!……あ」


O氏「どうした?」


窓から下を覗くと、ダンボールが1人の生徒の頭に見事すっぽりと被さっていた。


僕「ちょ、ちょっと!どうするのさ!」


O氏「あ、そういえば職員室に来るように言われているんだった。では、さらば!!!」


僕「逃げるなーーーーー!!!!!」


僕は恐る恐るもう一度下を確認してみる。


僕「あれ?どこにいったんだろ」


生徒がいなくなっていた。

てか、もう昼休みなのにこの時間に来るって、一体誰なんだ?


ガラガラッ


僕「!!!!?」


ドアを開いたその人は、さっきのダンボールを被ったまま教室へとやって来た。


「え、なに?バレンタインのサプライズ?」

「てかあれ誰?」

「おい。誰かツッコんでやれよ」


まずい。とてもまずい。

僕のせいであの生徒が変な奴になってしまっている。

まあ、僕だけのせいでもないんだけど。

てか何でそのまま被って来た?

いやいや、それよりうちのクラスの子だったって事はあの子って……。


彼女はそのまま自分の席に座ってダンボールを取った。


E子ちゃんだ!!!!!


「あの子あんな事する子だったっけ?」

「学校来れたって事は熱引いたのかな?」


クラスで1番謎な人物。E子ちゃん。

黒髪おさげで大人し気な女の子。

右目尻と口元にホクロがあるのがチャームポイントだ。

性格はよく分からない。

何故なら今年2年生になったのに、このクラスの人たち全員彼女と会話した人がいないから。

きっと、他のクラスの人も。

静かで笑顔を見せる事がない。

冷たいガラスのような女の子だとよく噂されている。


そんなE子ちゃんに、僕はダンボールを被せて登校させてしまった。

3日ほど前から熱がでたとかで休んでいたけれど、来たって事は治ったんだろう。

それで久しぶりに来たらこんな可笑しな事になってしまった。

やばい、謝らなきゃ。

僕が落としてしまいました、すみませんって言うだけで良い。

よし!


僕は立ち上がりE子ちゃんの目の前へ行く。


僕「あ、あの!そのダンボール……ひっ!!!!?」


睨まれた。物凄く冷たい目で下から睨まれてしまった。


僕「ごめんなさいーーー!!!!!」


僕はダンボールを回収して自分の席へと逃げる。


M美「ちょっと、あんたのせいなの?ちゃんと謝った?」


クラスで1番のギャル、M美さんが小声で話しかけてきた。


僕「言えなかったよ!こわくって!」


M美「分かる。私もあの子に近寄るのすら怖くてムリすぎる」


この通り。ギャルでも恐れて避けてしまうのがE子ちゃんだ。


キーンコーンカーン……


授業が始まる。

僕は、なんとなくE子ちゃんを見てしまう。

怒ってないかな?嫌われてないかな?


怖がってはいるけれど、実は僕はE子ちゃんの事が気になっている。

もちろん、恋愛的に。

話しかけるのも怖くて全然仲良くもなれない。

なんなら、E子ちゃんにとっての【知り合い】にすらなれていないかもしれない。


なんで好きになったかって?

理由はひとつ。

2年生になってすぐの事。放課後1人で帰っていたらE子ちゃんが少し先で立ち止まっていた。

そして他人の家の門へ手を伸ばし、何かを喋っている。

僕はバレないように後ろを通って、こっそり横目で見た。

E子ちゃんはおそらく、その家で飼われているであろう大きな犬を門越しに撫でて話しかけていた。

その表情は凄く緩んでいて、笑顔で、それがとても可愛かった。◯ツゴロウさんのように話しかけている彼女から僕はギャップの暴力を受けた。誰も知らないであろう、彼女は大の犬好きなんだ。


そんな恋愛漫画でありそうな定番な理由だけれど、あの笑顔を僕は忘れる事ができなかった。

それからずっと気になっている。


E子ちゃん、誰かにバレンタインあげるのかな……。

さっき目の前に行った時、微かに甘い香りがした。

そんな彼女の鞄の中にはチラッと見えたけれど、小さな紙袋が入っていた。

あれを貰える人は幸せ者だな。

きっとその人にはあの笑顔を向けられるんだろうな。


ん?E子ちゃん窓の外を眺めてる。

確かこの時間は3年生が校庭で体育をしている。

知り合いでもいるのかな?

それとも、チョコをあげる相手がその中にいたりして……。


先生「おい、坂口」


僕「はい!?」


知らないうちに目の前に先生が立っていた。


先生「そんなに俺の授業面白くないか?」


僕「いいえ!とても面白おかしいと思います!」


先生「……おかしいは余計だ。最後にノート集めて職員室まで持って来てくれな」


ポンと僕の頭に手を乗せて笑顔で言う先生。

……くそ、休み時間が削れちゃうじゃないか。


そして、その後は何もないまま放課後になった。

僕は何も考えないようにさっさと学校を出た。

あのままだと、嫉妬で狂ってしまいそうだったから。


でもこのまま帰るのも嫌だな。

どうせ家に帰るなり、妹と母さんが僕の鞄を漁るんだ。チョコはないのか?告白されたか?とか言いながら。

義理チョコすら貰えていない僕にとってそれはとても心にくるものがある。


……あ。

教室にあのダンボールを置いたままだ。

取りに帰ろうか悩むけど、もしそのままにしておいて先生に見つかったら……明日晒し者にされてしまう。

戻らなきゃ!


僕は走って学校へ戻る。

もう生徒たちはほぼ帰っているみたいだ。



教室の中から人の声がする。


「ずっと好きでした!受け取ってください!」


え!?告白!?

人生で初めて告白の現場見ちゃった!

確かあの子は千晃さんだっけ。

クラスで1番の美人だ。

羨ましい奴め!


「うん、ありがとう。……実は俺も好きだった」


うわ!カップル誕生した!

バレンタインって凄いんだなあ。


この後暫く2人がいちゃこらするだろうと考え、僕はその辺を適当に歩き回る事にした。

校舎を一周すれば帰ってるだろう。



僕「ん?E子ちゃん?」


校長室の前で紙袋を握りしめて立っている。

え、まさかE子ちゃんの好きな人って校長先生!?


ガチャと開けて出て来たのは、ネクタイの色からして3年生の男子生徒だった。

……そりゃあ、そうか。


その人は校長先生に会釈をして、E子ちゃんと歩き出した。僕はどうしても気になってしまい、2人の後を追いかける。


3年生のクラスに2人は入っていった。

ドアを少しだけ開け、僕は耳を澄ませる。


先輩「わざわざ挨拶に来てくれてありがとうな」


E子ちゃん「いえ、それは良いんです。ただ、転校って急過ぎませんか?」


転校?あの先輩転校するんだ。

3年生のこの時期に転校って、確かに急だ。


先輩「仕方ないさ。親父がどうしても海外に着いて来いって言って聞かないんだから」


E子ちゃん「……私、兄から3日前に聞いてショック過ぎて熱でたんですよ?」


あ、そんな理由があったんだ。

てかE子ちゃんお兄さんいたんだ。


先輩「悪い悪い。言わなくても良いと思っていたから。てか、俺の事好き過ぎでしょ」


先輩がハハッと冗談混じりに笑う。


E子ちゃん「言わなくて良い訳ないじゃないですか!好きですよ。先輩の言うように、好き過ぎてるんです!」


E子ちゃんが怒るように告白をした。

こんな感情出してるE子ちゃん初めて見た。

先輩の事そんなに好きなんだな……。


先輩「……そうだったのか。すまんな、気づいてやれなくて」


E子ちゃん「別に気づいてくれなかったのを怒ってる訳じゃないです。ただ、気持ちを知って欲しくて」


先輩「うん、ありがとう。でもごめんな、それは受け取れない」


E子ちゃん「私の事好きじゃないから?」


先輩「好きだよ。でも、それはあくまで妹に対する気持ちと同じで……。それに、これから海外に行くのに中途半端に付き合う事はしてあげられない」


E子ちゃん「そんな……」


先輩「せっかくの手作りだろうが、すまんな」


E子ちゃん「……ずるいです。先輩はいつもいつもそうやって優しくてずる過ぎます」


先輩「大丈夫か?」


E子ちゃん「別に泣いたりしませんよ。……海外に行っても寂しがりな兄の為に連絡くらいして下さいね?」


先輩「ああ、E子ちゃんにもその時海外の話を沢山してあげるよ」


E子ちゃん「じゃあ、私もう帰ります。さようなら」


ガララッ


……E子ちゃん泣いてた。


僕はさっきの2人がまだいたけれど、気にせず教室に寄って急いでE子ちゃんを追いかける。


学校を出てすぐの陰でE子ちゃんは泣いていた。


僕「……」


僕はダンボールを被る。


僕「お菓子〜、お菓子を持っていないかね?そこのお嬢さん?」


どうかお恵みをと書かれた逆さの文字を読み、E子ちゃんは涙を拭う。


E子ちゃん「S太くん?」


僕「S太?はて?僕はバレンタインデーに現れし妖怪。チョコメグミンだ!」


ポーズを取る僕を目を点にして見つめるE子ちゃん。


E子ちゃん「ふっ、メグミンってなによ。ちょっとだけ可愛いじゃない」


笑った。

E子ちゃんが笑ってくれた。


僕「で?その手に握られているお菓子は行く当てがあるのでしょうか?」


僕は両手を広げてE子ちゃんの前に出す。


E子ちゃん「どこにもありませんよ!」


E子ちゃんが紙袋から、手作り感のあるチョコクッキーを僕の手の上に出していく。

ちゃんと1個ずつ包装されていて、ホワイトチョコもある。


僕「行く当てがないのに、随分と凝っておりますね」


E子ちゃん「何も言わないで食べて」


僕は1つを袋から出し口に入れる。


僕「ん!美味しい!E子ちゃんこういうの得意なの?」


E子ちゃんを見て僕はハッとする。

潤んだ瞳からポロポロと涙が溢れ出してきている。

本当なら、美味しいも褒め言葉も全部あの先輩から聞きたかったんだよね。


僕「……ね、僕と友達になってくれない?」


E子ちゃん「へ?」


目を擦っていたE子ちゃんの手が止まる。


僕「実は前からE子ちゃんの事が気になっててさ。あ!もちろん、人としてだよ?」


本当の気持ちは言えなかった。

それを言ってしまうと、E子ちゃんを困らせると分かりきっていたから。

だから、まずは友達から。


E子ちゃん「……良いよ」


僕「ほんと!?やった!よろしくね!」


僕はE子ちゃんの濡れた手を無理やり取って握手をする。


僕「あ、来年はチョコプリンが良いな」


E子ちゃん「気早過ぎない?」


僕「1番に予約取っておかないとね!」


E子ちゃん「じゃあ、私今年のホワイトデーは丸柴ちゃんのぬいぐるみで、来年は丸柴ちゃんの食器セットで!」


僕「丸柴ちゃんって誰!???」


楽しそうに笑うE子ちゃん。

そうだ。これからは見ているだけじゃなく、E子ちゃんの笑顔を引き出せるように頑張ろう。


気づいたら僕のE子ちゃんに対する話しかけづらさは消えてなくなっていた。


バレンタインって、最高ーーー!!!!







バレンタインデーという事で、1日早いですがイベント用として物語を書いてみました。

E子ちゃん視点の話も投稿するので、そちらも是非読んでみて下さい!

ちなみに、次はファンタジー物を投稿するので楽しみに待っていて下さい!

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