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beat bite beside bind!  作者: alIsa


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5/7

その5

 雨雲は夜明けに追いやられるように西へ西へと流れてゆき、快晴の朝がやってきました。しっとりと心地よいそよ風が肌にぶつかるごとに、草や木の葉をしならす水滴が発する真珠色の光を目にするごとに、餌を求めて競争するスズメの甲高い鳴き声を耳にするごとに、日差しを受けてアスファルトから立ちけぶる熱のこもった水蒸気を吸い込むごとに、そしてそこに堆積している昨日の街の拍動に舌触るごとに、新鮮な一日の始まりを感じずにはいられません、それも夏を控えた胸躍るような朝です。

 その中で例の小さなクモだけが、朝の気配に胃をムカつかせながら、これ以上の空気を拒むかのように浅く短い呼吸を繰り返しています。彼は鳥居を見上げ、自身の巣を改めて点検しました。巣はようやく半分ほど形になっていますが、夜通し没頭しても未だに完成しないのは、彼の怠惰ではありません。なにせ通常のものより二回りも三回りも大きく、より緻密で、より完璧な巣を作ろうとしているのですから、時間なんてどれほどあっても足りないというものです。

 むしろ、このような巣を作る動機となった志向はすでに撤回されたというのに、また、先夜のミミズクとの対話でいくつかの致命的な衝撃に襲われたというのに、今なお最高の巣を完成させる意思を持っているのには、単に彼がムキになっているというより、何か執念めいたものを感じずにはいられません。事実、彼はある種の破壊的感情をもって糸を吐き続け、巣を張り進めていました。もし自分がこの巣を完成させなければ、誰が作るどんなものより優れた巣を作り上げなければ、自分の何もかもが全部嘘っぱちだ、と。

 太陽が彼のもとに訪れるほんのわずかな時間が終わり、糸の放つ光が弱まった後もしばらく、彼はその幾何平面を見つめていました。自身の技術と努力に惚れ惚れうっとりしていたわけでも、巣の未完成な半分にミロのヴィーナス的不在美を見出して興奮していたわけでもなく、かといって眠さでぼんやりしていたわけでも、全身を裏返してしまいたいほどの疲労に耐え忍んでいたわけでもありません。

 ただ凝視していたのです。いつもやってきたように、糸を通して自分を見つめているのでしょうか。とその時、クモと鳥居の間、クモの視線と直角で交わるように、一匹の虫がパタパタ通り過ぎました。ふらふらとした軌道で行ったり来たり、飛ぶのが楽しくてしょうがないという様子の幼いモンシロチョウです。

 他の羽虫と違い、純白の羽を大きく振るその姿はなんとも健気でかわいらしく、まるで愛しい人を想うあまり白紙のまま飛んでいった二つ折りの恋文のようです。天使と呼んでは大げさな文飾に聞こえるかもしれませんが、そう呼びたくなるものが彼女にはあるように思われます。

 蝶は地にいるクモにはもちろん、鳥居にかかった銀糸にも気づいていない様子で、おそらく自らの内から湧き出る晴れやかな活力にばかり気をとられているのでしょう。上下にピョコピョコ振れ動く白い羽はリズミカルに、まるで歌っているかのようです。


 羽を振って おかしくって

 堰を切って おおわらい

 蜜を吸って おいしくって

 ひとりぽっち おおあわて

やだ、風が頭を押さえつけてくるわ!

もお、ママにしてもらった髪が!

あら、風が何か言ってるわ

なに、宝?お宝があるの、どこに?

 お花の中に お池の隅に?

 お空の雲に お山の上に?

 ママに見せなきゃ お宝ここよ

 パパに言わなきゃ お宝そこよ

やあ、風がお腹をくすぐるわ!

わあ、お花が手を振ってるみたい!

まあ、お宝のとこまで連れてってくれるの?

 こちら 呟き 

 あちら 指さし

 ここ 風が

 そこ 花が

ピューピュー浮いて舞って チョウチョウ

チューチュー吸って飲んで チョウチョウ

ママにもパパにも神様にも 私はみんなに愛される

みんな羨むチョウチョなの

 きらきら おたから

 ひらひら 見つけに

 つやつや おたから

 ゆらゆら 行きましょ


 そうして蝶は風に身を任せ、やがて木々を抱く広い空の方へと見えなくなりました。クモは蝶の詩を物狂おしそうな目でにらみ続け、その姿が遠く去った後もなお、網膜に焼き付けた彼女の残像を青一面の空に踊らせては目で追いかけるのでした。

 大体、彼は昔から蝶が憎くてたまりませんでした。大きな羽を見せびらかすように動かし、周囲など眼中にないかのようにお転婆らしく飛び回るその姿、花にうっとりと口づけするその表情、何の憂いもなさそうなその様子を見るといつも、不愉快が沸々湧いてくるのでした。そこには酸っぱい葡萄のようなものも多分にあったでしょう、彼は生まれてから一度も蝶を捕食したことがないのです。

 いずれにせよ、彼は単なる本能からのみでなく、どこか屈折した感情から蝶を目の敵にしているのでした。また、その感情は日を追って年を重ねるごとに、不思議なことに、色濃くなっていったのでした。


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