炎と影の攻防 ― ハルトン夜襲
テルマハルト温泉郷の朝市。
湯気に混じって漂う活気の中、背筋を冷たいものが走った。
(……視線?)
気配は雑踏に紛れてつかみにくい。だが《真鑑定》を展開した瞬間、ざらつく情報が脳裏に突き刺さった。
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【真鑑定】
対象:テルマハルト市街地
反応:外部より侵入した影の気配。魔力痕跡多数。
目的:領主トリス暗殺。
行動:潜伏、移動中。
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(やはり来たか……しかも、今度は“直接”だ)
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すぐに仲間を集めた。
「……何か見えたのね」
ミーナの目が鋭く光る。
「暗殺者だ。複数いる。ここで迎え撃つのはまずいと思う。テルマハルトは温泉客も多い、人が巻き込まれる。なら……」
「領の中心ハルトンで待つ、か」
アリアが俺の顔を見て頷いた。
フレイアはにやりと笑う。
「舞台を整えてやるのね。悪くないわ。ハルトンは住み慣れた土地だし、みんな顔見知りだから、先に避難もしてくれる」
「カインもいるし、村の守りもある。地の利はこちらにある。……あえて“そこで寝ているように見せる”。それが一番だ」
こうして俺たちはテルマハルトを離れ、街道を急ぎ、夜までにハルトンへ戻った。
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夜。ハルトン村の屋敷。
窓を閉じ、灯りを落とす。外では冒険者と村人の巡回が自然に散り、要所に配置されている。すべて《統治》で調整済みだ。
「寝たふり、って本気でやるの?」
アリアが不安げに声を潜める。
「暗殺者は“無防備な寝顔”を狙う。こちらが目を閉じた瞬間を狙ってくる。その時が一番隙を晒すんだ」
「演技なら、もっと自然にね」
ミーナが布団を整えて小声で言う。
「寝顔が間抜けよ」
フレイアが肩をすくめる。
「余計なお世話だ」俺は苦笑し、目を閉じた。
だが俺には確信があった。
《詐奪》は、敵が俺を“害そうとする瞬間”に自動で反応するはず。寝ていると騙した瞬間に取れるのだ。
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夜更け。村全体が寝静まったころ。
ひたり、ひたり。足音もない影が屋敷に忍び込む。窓を開け、闇に溶けるように数人の黒衣が入ってきた。
(来たな……)
布団の中、呼吸を整える。目は閉じたまま。
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【真鑑定】
対象:暗殺者リーダー:キルダス
スキル:《情報網》 Lv5
効果:知り得た情報を仲間へ即座に言語化し伝達することができる。
備考:背後に王都貴族の影あり。
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(……やはり。やけに足並みが揃って群れで動けてるのはこれか)
キルダスがチャンスだと思った――その瞬間。
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◆ 詐奪発動
【詐奪】発動。
暗殺者リーダーが「寝ていると信じた瞬間」に、自らの油断が罠になったのだ。
「――っ!?」
黒衣の体が一瞬硬直する。
俺の視界で光が弾け、俺の中に何か力が吸い込まれていく。
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【詐奪】発動条件:敵の殺意を受けた時。
対象:《情報網》 Lv5
……奪取成功。
【新規獲得】《情報網》 Lv5
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「……繋がった」
俺は布団を跳ね飛ばし、飛び起きる。
刀《繋》を抜いた瞬間、ハルトン全体に向けて《真鑑定》を展開した。
その瞬間、脳裏に大量の情報が流れ込む。
屋根に二人。裏口に三人。窓際に一人。
すべての情報を《情報網》で仲間に伝え、《統治》を重ねて指示を飛ばす。
「屋根に二人! 裏口に三人! 窓際に一人!」
「アリア、窓際を射抜け! フレイア、裏口を炎で塞げ! カイン、屋根からの侵入を叩け! ミーナ、囮は任せた!」
「了解!」
「やってやる!」
仲間たちの声が頭の中で重なる。
アリアの矢が音もなく放たれ、窓から忍び込もうとした黒衣の肩を射抜く。悲鳴があがり、侵入が止まる。
「次!」
フレイアが指を鳴らす。透明な炎が裏口を覆い、影三つが足を止めた。熱で剣が焼け、動きが鈍る。
「ほらほら、熱いでしょ?」
カインは屋根へ駆け上がり、巨槌を振り下ろす。
「おおおっ!」
瓦ごと影を叩き潰し、屋根上の暗殺者を一撃で吹き飛ばした。
「次は俺だ!」
残った暗殺者が散り散りに逃げようとしたが――
「逃げ道はない!」
仲間からの情報が《情報網》を通じて俺に敵の動きを逐一伝えてくる。
右へ、左へ、潜伏しようとしても――全部見える。
「アリア、二時の方向! フレイア、炎で五時を押さえろ! カイン、七時から回り込め!」
《統治》の声が飛ぶたび、仲間の攻撃が敵の一歩先を制した。
「ぐっ……!」
黒衣の一人が倒れ、次々と拘束されていく。
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最後に残ったキルダスが刃を振りかぶる。
「まだだ……俺には」
「もう、ない」
俺は低く言い放ち、《繋》でその剣を弾き飛ばした。
「情報網は、俺のものだ」
キルダスは呻き、地に崩れ落ちた。
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残骸を確認し、《真鑑定》を走らせる。
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【真鑑定】
対象:暗殺者装備
結果:王都黒衣商会の紋章/マルケス伯の後援状の写し
備考:背後関係の証拠として使用可能。
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「……証拠も揃ったな」
ミーナが帳面を閉じる。
「王家監察に送れる。領主を狙った直接の証拠よ」
「寝込みを襲ったつもりが、自分たちが逆に“寝かしつけられた”……ざまぁないわね」
フレイアが鼻で笑う。
アリアは弓を下ろし、俺を見た。
「トリス……あなた、やっぱり怖いくらい強い」
「違う。俺一人じゃない。皆がいたからだ」
俺は《繋》を鞘に収め、夜風を胸いっぱいに吸い込んだ。
影は払った。だが、影を放った“本体”はまだ王都にある。
(次は……正面から来る)
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こうして、ハルトン村の夜は守られた。
だがこれは序章にすぎない。
“炎と影の攻防”は、さらに激しさを増していくのだった。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




