温泉郷と怪しい会合
「はあ? テルマハルトが温泉郷になったですって?」
鍛冶場の戸口で腕を組んでいたフレイアの目が、きらきらと輝いた。
銀の髪をばさっと揺らし、紅の瞳をまっすぐ俺に向ける。
「聞いてないわよそんなこと! あんたたちだけで楽しんで……ずるい! 私も行く!」
「いや、ずるいって……」
俺は苦笑いで返す。
「テルマハルトの温泉は領地整備の一環で……観光も含めて進めてるけど、あくまで仕事の」
「仕事でもいい! 温泉よ? 湯気よ? それに温泉卵!」
フレイアはぐっと拳を握った。
「私は行く。決まり!」
「決まりって……勝手に決めるな」
俺が頭を抱えていると、すかさずアリアが手を挙げた。
「私も行きたい!」
彼女はぱっと笑顔になる。
「この前は探索と打ち合わせばっかりだったし……純粋にゆっくり浸かりたいもの」
「私も賛成」
今度はミーナが帳面を閉じ、涼しい顔で頷いた。
「温泉卵の売れ行き調査も兼ねられるし、領民の声を直接聞ける機会にもなるわ」
「……お前らまでか」
三人の視線が一斉に俺に突き刺さる。
フレイアは「行くぞ!」とばかりに腰に手を当てて仁王立ち、アリアは期待に頬を染め、ミーナは「もう議決済み」と言わんばかりに羽根ペンを握っている。
抵抗は、無意味だった。
「……分かった。行こう。テルマハルト温泉郷へ」
「よっしゃあ!」
フレイアが子どものように両手を挙げた。
「じゃあ今日は荷造り! 浴衣も用意しなきゃ!」
「浴衣?」
俺は首をかしげた。
「当然でしょ!」
フレイアは笑顔でウインクする。
「温泉といえば浴衣、浴衣といえば祭り! あんた領主なんだから、もっと派手に楽しませなさいよ!」
俺は思わず天を仰いだ。
(……騒がしい旅になりそうだな)
⸻
数日後、テルマハルト温泉郷。
夕暮れの湯けむりの中、足湯の縁に並んで座る四人の姿があった。
フレイア、アリア、ミーナそして村の娘たち。
みな浴衣に袖を通し、湯気に頬を紅潮させて笑っている。
「うわ、気持ちいい……! ほら見て、この湯、足の先からじんわり温まっていく!」
フレイアが大声で感嘆し、足をばしゃばしゃさせる。
「ちょっと、はしゃぎすぎ」
アリアが笑ってたしなめるが、楽しそうに髪を耳にかけている。
「でも……いいわね。こんなふうに領地の人と混じって笑えるなんて」
ミーナがしみじみ呟く。
「温泉卵、もう一個ちょうだい!」
フレイアが籠に手を伸ばす。
黄身をぱくりと食べて、幸せそうに目を細めた。
その笑い声は、湯けむりと共に夜空へと溶けていった。
⸻
だがその一方で。
王都の奥まった館の一室。
帳を下ろした薄暗い部屋に、数人の貴族と黒衣の商会主が集まっていた。
「テルマハルト……あの辺境が、温泉卵ひとつで騒ぎになるとはな」
「放っておけば王家の直轄になるやもしれん。今のうちに手を打つべきだ」
「ふふ、金の匂いには人も蟻も群がるものだ」
蝋燭の炎が揺れ、彼らの口元にいやらしい笑みを浮かび上がらせた。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
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