間話-十五になる前の夏に
あれから一年。
十四の夏に《繋》を手に入れた俺は、十五になるまでその刃と共に鍛錬を続けていた。
火の前で打ち、汗を流し、孤児院の子どもたちを守り、時に小さな依頼をこなす。
《繋》は常に俺の腰にあり、振るえば鋭さで応え、叩き直せば静かに待ってくれた。
まるで生きている相棒のようだった。
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「もっと腰を落として! 刃筋がぶれる!」
カインが横で叫ぶ。
「わかってる!」
汗だくになりながら、俺は藁束を斬る。
《繋》の切れ味は落ちない。だが、扱う俺が未熟なら意味がない。
斬った数だけ腕は重くなり、何度も転び、また立ち上がる。
それでも、刃を握ると心臓が高鳴った。
「……よし。次は俺が相手だ」
カインが木刀を構える。
《繋》を抜くと、静かに光が宿った。
(負けられない。こいつと共に強くなるんだ)
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鍛錬が終われば、工房の裏でアリアと並んで座った。
桶の水で汗を流し、夏の風に吹かれながら、くだらない話をするのが日課だった。
「ねえ、トリス。最近、刃ばっかり相手にしてない?」
「……相棒だからな」
「ふふ。じゃあ、私は?」
からかうように覗き込むその瞳に、心臓が跳ねた。
「アリアは……隣にいてくれる人。大事な人」
「っ……もう、そういうこと言うんだから」
真っ赤になったアリアが肩をつつき、俺は必死で誤魔化した。
でも、本当にそう思っていた。
孤児院を出てからも、工房に通う道すがらも、隣に彼女がいるだけで心強かった。
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ある夕暮れの日。
《繋》を研ぎながら、アリアがぽつりと言った。
「トリス……この刃と一緒なら、きっと遠くまで行けるわ」
「遠く、か」
「そう。だってこれは、あなたが打った刃。あなた自身そのものだから」
視線が合い、何かを誓うように見つめ合った。
沈む夕日が赤く二人を照らし、俺は無意識に《繋》を強く握りしめた。
(この刃と共に彼女と共に、どこまでも行ける)
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十五になった春。
俺は領主としての任を受け、王都を発つことになった。
工房の戸口で、カインは腕を組み、にやりと笑う。
「決めた!一緒に着いて行くぞ弟弟子。領主様になったトリスの隣は面白そうだ!そしてこれからも俺の相棒だ」
ガルドは背を向けたまま言う。
「火の前で学んだことを忘れるな。鉄は誠実だ。お前もそうであれ」
そしてアリアは俺の隣に立ち、そっと袖を掴んだ。
「ねえ、トリス。どんな風になっても……私は一緒よ」
「……ああ。一緒に行こう」
《繋》を腰に帯び、アリアの手を握る。
あの夏に交わした言葉と火の熱が、今も胸で燃えていた。
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これは、十五になる前の回顧録。
刃と共に鍛え、彼女と笑い、仲間と支え合った日々。
そして、領主として歩み出す俺の出発点の思い出だ。
《繋》がある限り、俺はきっと強くなれる。
仲間を、領地を、そしてこれから仲間になるみんなを守るために。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




