蒼晶の眠る洞-蒼の輝き
蒼晶の眠る洞。
俺たちは再び、その浅層に足を踏み入れていた。
湿り気を帯びた空気。青白く光る鉱石が岩壁に浮かび、仄暗い洞内を不気味に照らしている。
「前回より……ずいぶん静かだな」
カインが低く呟き、背負った大槌を握り直した。
「油断しないで」
ミーナが冷静に言い返す。「ここは“成長中のダンジョン”。昨日と今日で、配置も魔力も変わり得るわ」
「なるほど。昨日の道が今日の罠か」
アリアは弓を下げたまま薄く笑みを浮かべる。「だから冒険はやめられない」
俺は刀《繋》の柄に軽く手を添え、深呼吸した。
(この洞の浅層は、俺たちの領地に直結する価値を持つ。……一つ一つ確実に踏みしめろ)
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最初に現れたのは《クリスタルスコーピオン》。
透明な外殻を纏い、蛍石のような光を反射させながら岩陰から這い出す。
「また出やがったな……!」
カインが前に出る。
「カイン、尻尾に気をつけろ! 毒針が速い!」
俺が叫ぶと同時に、スコーピオンが尾を閃かせた。
ヒュッ、と鋭い音を立てて毒針が突き出る。
だが、カインは前回の戦闘で動きを掴んでいた。大槌を横薙ぎに振り、尾を弾き返す。
ガキン! と澄んだ音。透明な外殻に亀裂が走る。
「今だ、アリア!」
「任せて!」
アリアの矢が一直線に飛び、亀裂へ吸い込まれるように突き刺さった。
外殻が砕け、スコーピオンが甲高い悲鳴を上げて崩れ落ちる。
「一体目、討伐完了」
ミーナが帳面を広げ、冷静に記録を残した。
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次に襲いかかってきたのは《ロックバット》の群れだった。
岩肌と同化したような黒灰色の翼を広げ、甲高い鳴き声とともに天井から舞い降りてくる。
「耳を塞げ!」
俺が叫ぶ。鳴き声には軽い振動が混ざり、鼓膜を震わせて平衡感覚を狂わせてくるのだ。
「こんなの、もう慣れたわ!」
アリアが口をへの字に曲げ、矢を次々に射る。翼を貫かれたバットが悲鳴を上げ、床に叩きつけられた。
「散開して囲め!」
俺は統治スキルの感覚を用い、仲間の立ち位置を即座に把握する。
飛びかかってきた一体を《繋》で切り払う。
刀身に青い光が走り、肉を裂く感触が腕に伝わった。
「よし、殲滅!」
カインが叫び、大槌で最後の一体を叩き落とす。
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最後に立ち塞がったのは《モスゴーレム(幼体)》だった。
湿気を帯びた壁の隙間から、苔むした巨体がゆっくりと這い出す。
苔と石をまとい、人の倍はある体躯。幼体とはいえ、その存在感は圧倒的だった。
「またお出ましか」
カインが大槌を握りしめる。「だが、弱点は分かってる」
「苔を焼けば動きが鈍る」
ミーナが杖を掲げる。
「《ウィンド・フレア》!」
炎と風が絡み合い、ゴーレムの体表を覆う苔を焼き払った。
黒煙が立ち上り、ゴーレムが鈍重に腕を振り下ろす。
「遅い!」
俺は踏み込み、《繋》で関節を狙って斬り込んだ。
石の継ぎ目に刀が食い込み、ひびが走る。
「カイン!」
「任せろ!」
カインの大槌がそのひびを叩き割った。轟音とともにゴーレムが崩れ落ち、苔と石片が飛び散る。
「ふう……前回に続いて三種、制圧完了ね」
アリアが弓を下ろし、息をついた。
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戦闘が終わり、俺たちは奥の岩壁に目を向けた。
そこには青白く淡く光る筋が、まるで血管のように走っている。
「……これか」
俺は手をかざし、《真鑑定》を発動する。
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【真鑑定】
対象:蒼晶の眠る洞・浅層岩壁
反応:極小ミスリル(品位低)/魔結晶の小粒
混合脈
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「やっぱり……ミスリルだ」
俺の言葉に、仲間たちが息を呑んだ。
「本当に……!」
アリアの瞳が輝く。「あの伝説の鉱石……こんなに近くに」
「でも、混入率は低い」
ミーナが指で光る筋をなぞる。「ごっそり掘るんじゃなく、少しずつ削ぎ取るしかないわね」
「ふむ……」
カインが大槌を下ろし、腰を落とす。
彼の目は真剣そのもの。鍛冶師として、石と金属を見抜く眼差しだ。
「トリス、ここだ」
カインが岩肌の一点を指さす。「衝撃を加えすぎず、筋を沿って叩けば……ミスリルの筋だけを浮き出させられる」
「つまり、宝石を彫り出すみたいに?」
俺が尋ねると、カインは頷いた。
「そうだ。無理をすれば岩脈ごと崩れる。だが……俺たちなら、刀に混ぜる程度の“欠片”を掘り出せるはずだ」
「やってみましょう」
ミーナが背を押すように言った。
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カインが大槌を構え、呼吸を整える。
コン……コン……。
ゆっくりとした一定のリズムで岩を叩く。
やがて、光る筋の部分だけが浮き上がるように亀裂を走らせていく。
「すご……」
アリアが思わず声を漏らす。
「焦るな。こういうのは“我慢比べ”だ」
カインは額に汗を滲ませながらも、正確に打ち込む。
亀裂が広がり、最後の一撃で。
カラン、と小さな音を立てて、指先ほどの欠片が岩から外れた。
淡い蒼の輝き。
それはまさしく、ミスリルの欠片だった。
「……成功だ」
カインが欠片を掌に載せ、俺に差し出す。
「これなら、《繋》に混ぜられる」
俺は欠片を受け取り、刀を見下ろした。
(繋よ……お前も、次の段階に進む時が来たんだ)
胸の奥が熱くなるのを感じた。
⸻
こうして俺たちは、蒼晶の眠る洞での初めての“本格採掘”を成功させた。
量はわずか。だが確かに、この手に掴んだのだ。
領地の未来を左右する“蒼の輝き”を。
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




