報告と再調査(後半:蒼晶の眠る洞)
翌朝。
俺たちはハルトンを出て、東の丘陵地帯にぽっかりと口を開けた《蒼晶の眠る洞》の前に立っていた。
狭い入口からは湿った風が流れ出し、ほんのりと鉱石が焼けるような金属臭が漂っている。
「昨日も思ったけど……やっぱり普通の洞窟じゃないな」
カインが槍を肩に担ぎ、目を細める。
「空気が澱んでる。魔力が飽和してるわ」
ミーナは杖を握り、周囲の気配を探るように眉を寄せる。
アリアは弓を手に、慎重に矢羽を整えながら俺を見た。
「……どうする? 入るの?」
「もちろんだ」
俺は短く答えた。
「ただし、今日は入口から浅層だけ。深追いはしない。真鑑定の結果を拾って、魔物の種類を確かめる」
全員がうなずく。
そして、俺たちは暗がりの中へ足を踏み入れた。
⸻
内部は湿度が高く、滴る水音が響いている。
天井や壁には青白い鉱石が散りばめられ、ほのかな光を放っていた。
ランタンを掲げる必要はなく、自然の照明が足元を照らす。
「……きれい」
アリアが思わず声をもらす。
「蒼晶って、この光のこと?」
「いや、これはただの蛍石だな」
俺は壁に手を当て、《真鑑定》を発動した。
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【真鑑定:浅層結果】
・階層推定:100階層以上(成長中)
・浅層資源:極微小低純度ミスリル、極微小低純度アダマンタイト、低純度魔結晶、小規模鉱脈(鉄・銅)
・魔物:
①《クリスタルスコーピオン》
②《ロックバット》
③《モスゴーレム(幼体)》
・危険度:中(群れ行動あり)
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「……やっぱり出たか」
鑑定結果を読み上げると、仲間たちの顔が一斉に引き締まった。
「クリスタルスコーピオン?」
アリアが首をかしげる。
「結晶質の甲殻を持つ蠍。毒針持ち。群れる」
俺は説明する。
「ロックバットは岩に同化する蝙蝠型。群れで奇襲。
そして……モスゴーレム。まだ幼体だけど、苔や鉱石が混じった小型の魔像だ」
「聞くだけで厄介そうね」
ミーナが冷ややかに言い、杖を構えた。
「浅層からこれだ。百階層以上なんて言われても不思議じゃねえな」
カインが舌打ちする。
⸻
その時だった。
壁の影から、カチリと硬質な音が響いた。
「来るぞ!」
俺の声と同時に、結晶質の蠍が三体、床を這い出してきた。
体長は犬ほど。青白く光る外殻がランタンのように反射し、尾の毒針が不気味に揺れている。
「硬そうだな」
カインが前に出て槍を構える。
「アリア、関節を狙え!」
「了解!」
アリアの矢が放たれ、蠍の脚の付け根に突き刺さった。
結晶の表面が砕け、蠍が甲高い音を立ててのたうつ。
「毒針来るぞ!」
俺は叫び、カインが槍で突き上げる。
針の軌道が逸れ、岩壁に突き刺さった。ジュッと音を立て、石が焦げる。
「毒性強い! まともに食らったら即アウトよ!」
ミーナが警告し、火球を放った。
火は蠍の甲殻を焼き、ひび割れを走らせる。
「今だ!」
俺は踏み込み、刀を振り抜いた。
硬い甲殻が弾け、蠍の胴が真っ二つに割れた。
⸻
「まだだ!」
頭上から影が落ちた。
「ロックバット!」
アリアの声と同時に、十数匹の蝙蝠型魔物が天井から群れをなして襲いかかってきた。
翼は岩のように硬質で、羽ばたくたびに砂埃と石片が散る。
「散開!」
俺の号令で全員が動く。
カインが槍で突き払い、ミーナの風魔法が旋風を巻き起こし群れを散らす。
アリアは空を裂くように矢を放ち、翼を貫かれたバットが悲鳴を上げて落下する。
「くそ、しぶとい!」
カインが舌打ちした瞬間、後方で石塊がうごめいた。
「……動いた?」
俺が振り返ったときには遅かった。
岩壁から分かれたような塊――《モスゴーレム(幼体)》が立ち上がり、苔むした腕を振り上げていた。
「ゴーレムだ!」
振り下ろされた拳が地面を砕き、衝撃で体が弾き飛ばされそうになる。
苔と岩の混じった体は湿気を帯び、ずしりとした重さを持っていた。
「弱点は……!」
俺は《真鑑定》を展開する。
――――――――
【真鑑定:モスゴーレム(幼体)】
・属性:土+植物
・弱点:火属性/苔部位(乾燥に弱い)
・耐性:物理衝撃
――――――――
「苔だ! 乾燥させろ!」
俺の叫びに、ミーナが杖を振る。
「《ウィンドブラスト》!」
風がゴーレムの苔を剥ぎ取り、露出した岩肌にアリアの矢が突き刺さる。
カインがその隙を逃さず、槍で胸を貫いた。
岩の塊が崩れ、苔の塵を撒き散らして沈んでいく。
⸻
「……ふう」
全員が肩で息をしていた。
浅層でこの手応え。
「これが最低百階層も続くんだろ?」
カインが額の汗を拭った。
「洒落にならねぇな」
「でも……逆に言えば、宝の山よ」
ミーナは目を輝かせる。
「ミスリル、アダマンタイト……こんな序盤から魔結晶まで出るんだから」
「危険と商機は裏表、ってことか」
アリアは矢を納め、俺を見た。
「トリス、どうする?」
俺は少し考え、刀を鞘に収めた。
「今日はここまでだ。
だが――必ずまた来る。
この洞窟は、領地の未来を変える力を持っている」
仲間たちは一斉に頷いた。
背後でモルネルが「もるっ」と鳴き、鼻をひくひくさせて洞窟の奥を見つめていた。
(蒼晶の眠る洞……必ず攻略する。俺たちの“都市”のために)
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




