集会所での会議
「みんな、集まってるな」
俺が集会所の扉を押し開けると、中では既に数人が待っていた。
大きな円卓の周りに座るのは――アリア、ミーナ、カイン、そして冒険者ギルドから派遣されているクローヴェだ。
クローヴェは四十手前の精悍な顔つきで、支部設立が決まるまでは“代理”として動いてくれている。
「おかえりなさい、トリス様」
ミーナが立ち上がり、書類を抱えたまま軽く会釈する。
彼女の真剣な目を見て、俺は椅子に腰を下ろした。
「さて……今夜は重い話になるな」
カインが腕を組み、机に肘をついた。「アントの運用だけでも手がかかるのに、あの“蒼晶の眠る洞”だ」
アリアが頷く。「本当に放っておけないわ。あそこは……ただの洞窟じゃない」
俺は深呼吸して、仲間たちを見回した。
「まずは、《真鑑定》の結果を共有する」
羊皮紙に写した情報を卓上に置く。全員が身を乗り出すようにして目を通した。
――――――
【真鑑定】(遠隔・概観)
対象:蒼晶の眠る洞(成長中推定)
反応:微弱ミスリル/極小アダマンタイト/魔結晶(低純度)
危険:成長中につき不明(魔力反応有り)
商機:高(加工技術と運用人員が条件)
備考:地熱弱、湿度高。入口狭隘
――――――
「ミスリル……アダマンタイトまで……」
クローヴェの声が低く響いた。「もし本格的に鉱床化すれば、王都から軍が派遣されてもおかしくない」
「だからこそよ」
ミーナが筆を走らせながら顔を上げた。
「“宝の山です”なんて報告したら、あっという間に欲にまみれた貴族が押し寄せるわ。そうなったらハルトンなんて吹き飛ぶ」
「じゃあ、どう伝える?」
アリアが腕を組む。「村人にも、王家にも、両方の視点が必要よ」
ミーナはさらさらと文面を書き写し、読み上げる。
「“成長中につき運用不可。今は監督管理が必要”――これを前に出す。
同時に“将来的な商機は大きい”と記しておけば、王家は興味を持つけど、無茶な介入は抑えられる」
「弱みを見せつつ、期待を匂わせる、か」
カインが笑った。「したたかだな、ミーナ」
「当然よ。交渉の基本は“相手に貸しを作ること”。ハルトンは今、領地としての信用を積み上げる段階なの」
俺は頷き、ミーナの書面を受け取った。
「よし……王家への報告はこれでいこう。署名は俺が入れる」
⸻
「じゃあ、村人たちには?」
アリアが問いかける。
「危険だから近づくな、ってだけじゃ、不安が広がる。夢を見せるのも大事じゃない?」
クローヴェが口を挟む。
「確かに。噂は広まる。隠そうとしても無理だ。なら、いっそ冒険者ギルドの“探索依頼”として掲示するのが筋だな」
「なるほど」
俺は顎に手をやった。
「ギルド依頼にすれば、冒険者が動いて自然と防衛も増える。支部設立の正当性も強まる」
「そういうことだ」
クローヴェがうなずく。「ギルドは“冒険者の活躍の場”を欲してる。蒼晶の眠る洞は格好の口実になる」
「でも、それで冒険者ばかり集まって村人が落ち着かなくなったら?」
アリアが眉を寄せる。
「だから支部が要るのさ」
クローヴェは笑った。「秩序を作るためにな」
「……納得」
アリアは小さく息を吐き、俺に視線を向けた。
「トリス、最終判断はあなたよ」
⸻
円卓に視線が集まる。
俺は姿勢を正し、静かに言った。
「村人には、“アントの安定供給で豊かになる”と伝える。それだけで十分だ。
蒼晶の眠る洞については伏せる。危険が確定していない以上、期待を持たせてはいけない」
アリアが少しだけ驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。
「……そうね。生活を守るのが第一だもの」
「王家には、“監督管理が必要だが、将来の価値は大きい”と報告する。
ギルドには正式に依頼を掲示してもらう。そのために、支部設立を急ぐ」
俺はクローヴェを見やった。
「頼めるか?」
「もちろんだ、領主様」
クローヴェは笑い、力強くうなずいた。
「……これで決まりだな」
カインが腕を組んだまま笑った。「もう、すっかり領主の顔してやがる」
「まだまだですよ」
俺も笑い返す。「でも、こういうやりとりも俺の仕事だ」
⸻
その時、机の下から「もるっ」と小さな声が聞こえた。
モルネルが短い手足でよじ登り、机の上に顔を出したのだ。
「ネルまで会議に参加?」
アリアが吹き出す。
「癒し担当だからね」
ミーナが微笑み、ネルの頭を撫でる。
小さな聖なる光がふっと灯り、場の緊張が解けた。
俺はふと窓の外を見た。
夜空には星が広がり、村の灯りがその下で瞬いている。
(ここからだ――)
(ハルトンを、“ダンジョン都市”にする)
胸の奥に熱が灯った。
仲間たちの笑顔と村人の生活を守り、未来を切り開くため
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




