蒼晶の眠る洞の入り口確認
温泉アント卵で賑わい出して数日後。
俺たちは新たに噂されていた洞窟の前に立っていた。
「……ここがそうか」
入口は人が二人並べばいっぱいになるほど狭い。湿った風が吹き出し、かすかに金属のような匂いが混じっている。
「空気が重いな。普通の洞穴じゃない」
カインが腕を組み、鋭い目で周囲を見回す。
「見て、壁……」
アリアが指で示した。
岩肌には古い削り跡のような線が残り、さらに大きな獣の爪痕が重なっていた。
「昔、誰かが掘った? でも途中で放棄された……そんな感じね」
「けど、今は魔力が満ちてる」
カインは低く唸る。「人の跡に“ダンジョン”が被さったのかもしれん」
「湿度が高いわね。髪がすぐぺたんってなる……」
アリアが苦笑しながらも目を細める。
「でも、この匂い……鉱石に近い。鉄や銅じゃない、もっと澄んだ匂い」
俺は深く息を整え、《真鑑定》を発動する。
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【真鑑定】(遠隔・概観)
対象:蒼晶の眠る洞(成長中推定)
反応:微弱ミスリル/極小アダマンタイト/魔結晶(低純度)
危険:成長中につき不明(魔力反応有り)
商機:高(加工技術と運用人員が条件)
備考:地熱弱、湿度高。入口狭隘
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「……ミスリルの反応がある」
結果を口にすると、仲間の目が一斉に光った。
「ミスリル!?」
アリアが一歩踏み出す。「伝説の鉱石よ? 武具にすれば軽くて強靭、王侯貴族が血眼になるやつ!」
「アダマンタイトもわずかに反応がある。魔結晶も……ただし全部、まだ“成長中”」
俺は言葉を選んだ。
「つまり今は小粒だが、時間が経てば“大きな鉱床”になる可能性がある」
「宝の卵ってわけか」
カインが腕を組み直す。「でも、まだ早い。魔物の規模も不明だ」
「そうね。湿度が高いってことは、魔物が繁殖しやすい環境かも」
ミーナは顎に指を当て、帳面を取り出す。
「それに地熱が弱い。加工には乾燥施設や冷却設備……予算を取るにはいい口実になるけど」
「口実?」
アリアが首を傾げる。
「“加工のために支援が必要”って理由で王家に申請できる、ってこと」
ミーナは涼しい顔で微笑んだ。
「ただ“宝の山です”とだけ書けば、強欲な貴族が押し寄せるでしょう? だから表向きは“管理が大変です”って弱みを見せる。裏では“将来的に莫大な価値あり”と明記。……そうすれば支援は引き出せる」
「なるほどな」
カインが口元を吊り上げる。「表と裏、両方使い分けるわけか。さすがだ」
「だが注意も必要だ」
俺は刀の柄に手を置く。
「アリアの言う通り、“危険未確定”は不気味だ。未知の魔物が出れば、村人を巻き込むわけにはいかない。――だから今日はここまで。入口確認だけで十分だ」
モルネルが小さく「もるっ」と鳴き、洞窟を睨むように鼻をひくひくさせた。
⸻
帰路の街道。
太陽の光が降り注ぎ、荷車を引く馬がのどかに進んでいく。
「ねえトリス」
ミーナが歩きながら帳面を広げる。
「“蒼晶の眠る洞”をどう王家に伝える? “宝の山”なんて言えば、必ず争奪戦になるわ」
「……“成長中につき運用不可、今は監督管理が必要”。そう書く」
俺は答える。
「ただし、“将来的な商機は大”とも添える。これで王家の関心を引きつつ、暴走は抑えられる」
「巧いな」
カインが笑う。「弟弟子のくせに、もう領主の顔してやがる」
「まだ弟子扱いですか」
俺も笑い返す。「でも、こういう細工も仕事ですから」
「じゃあ、村人には?」
アリアが振り返る。
「“危険だから近づくな”だけでいい? それとも、期待を持たせる?」
「……今は伏せる。夢を語るのは安全が確保されてからだ」
俺は真剣に言う。「守るべきは“今の生活”。余計な噂で浮き足立たせる必要はない」
アリアは目を細め、ゆっくりとうなずいた。
「……いい判断ね。あなたらしい」
⸻
街道の先に、ハルトンの屋根が見え始めた。
旗が風に揺れ、村人たちが道端で手を振っている。
「なあトリス」
カインがぽつりとつぶやく。
「本当に、ここを“ダンジョン都市”にする気か?」
「もちろんだ」
俺は空を仰ぐ。青空が広がり、その下で街道が真っすぐに伸びていた。
「アントのダンジョン、そして蒼晶の眠る洞。二つの拠点があるなら……俺たちの領地は必ず変わる」
「ふふ。いいわね」
アリアが笑う。「“冒険者が集う都市”……想像するだけで胸が躍る」
「商売の芽も無限大よ」
ミーナがにやりと笑う。「温泉アント卵、街道、そしてダンジョン。全部揃えば――稼げる」
モルネルが「もるっ!」と鳴いて胸を張る。
その姿に、俺たちは思わず笑みをこぼした。
(――これが始まりだ)
(必ず“都市”へ。俺たちの未来は、この道の先にある)
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




