温泉アント卵とダンジョン都市への誓い
広場の祭りは夜更けまで続いた。
子どもたちは駆け回り、大人たちは盃を交わし、村全体がひとつの家族のように笑い合う。
「トリス様、もう食べられません!」
子どもが腹をさすって転がる。
「寝転んだらなぜか元気になるんだって!」
「ほんとだ! 走れる!」
笑い声が夜空に弾けた。
「わしらも若返った気分じゃ」
「こりゃ村の宝だな」
老人たちも頬を紅潮させ、盃を掲げていた。
モルネルは子どもたちに混じって卵を転がしたり、温泉に沈めたり。
「ネルも食べたいの?」と差し出されると、黄身をちゅるっと吸い、鼻をひくひく。
「かわいい!」
歓声が一層大きくなり、笑いが広がる。
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祭りの裏。少し静かな木陰に、俺たちは集まっていた。
「トリス」
ミーナが真剣な顔で切り出す。
「この“温泉アント卵”、絶対に商品化すべきよ。効能を前面に出せば、兵士にも旅人にも需要は計り知れないわ」
「だな」
カインが力強く頷く。
「戦場でこれを食った兵士は間違いなく助かる。俺だって常備したいくらいだ」
「それに……」
アリアが広場の子どもたちを見やり、微笑む。
「村の人たちの顔を見た? あの笑顔を特産品で守れるなら、やる価値ある」
俺は大きくうなずいた。
「よし。次は“外に広める”仕組みを作ろう」
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数日後。ハルトンの集会所。
机いっぱいに地図と書類が広がり、空気は一気に真剣さを増していた。
「まずはギルド支部ね」
ミーナがすらすらと羽根ペンを走らせる。
「ダンジョン素材の取引はギルドなしでは回らない。申請文はもうまとめたわ」
「聞かせてくれ」
彼女は立ち上がり、文面を読み上げた。
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件名:冒険者ギルド支部設立申請書
提出者:ハルトン領領主 トリス=レガリオン
理由:
・アントダンジョンの安定的な素材供給と治安維持
・新ダンジョン《蒼晶の眠る洞》の存在確認
・交易と領地発展への寄与
――――――――
「……完璧だ」
俺は署名を入れる。
「次は王家監察への報告」
ミーナが別の羊皮紙を差し出す。
「これは領主の決裁が必要よ」
「俺の役目か」
報告には街道整備の進捗、温泉アント卵の効能、ダンジョンの現状が整理されていた。
「責任、重いな」
「でも、それをやるのが領主でしょ?」
アリアが柔らかく笑う。
「……そうだな」
俺は苦笑しながらも筆を走らせ、署名を入れた。
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その夜。
窓を開ければ、満天の星。
「ギルド支部、王家への報告、交易……全部が動き出す」
俺は星を仰ぐ。
「ここからだな。ハルトンを“ダンジョン都市”にする」
胸の奥に熱が広がった。
温泉アント卵の香りと、村人たちの笑顔が未来を照らしていた。
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後日、テルマハルトの温泉地に、またひとつ新しい賑わいが生まれていた。
湯けむり立ち込める露天の一角に、大きな桶がいくつも並び、その中で白く艶やかな卵がぐつぐつと煮えている。
「これが……噂の温泉アント卵か」
旅の商人が目を丸くする。
「はい、召し上がってみてください」
ミーナが笑顔で盆を差し出す。
湯気を立てる卵を割ると、中から黄金色の黄身がとろり。
「……っ!」
商人は思わず息を呑み、一口かじる。
「濃い! 滋養が体に染み渡るようだ……!」
「疲労回復にも効きます」
アリアがにこやかに添える。
「冒険で疲れた身体にちょうどいいの」
「保存性も高い。旅人が持ち歩くには最適だ」
カインが頷く。
「俺なら戦場に必ず持って行くな」
「なるほど……」
別の商人も財布を取り出した。
「王都に持ち込めば、飛ぶように売れるぞ」
子どもたちが「おいしい!」と笑顔を見せ、老人たちも「若返るわい」と笑う。
テルマハルトの湯けむりに、笑い声と黄身の香りが重なって広がった。
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その夜、湯宿の一室。
ミーナが帳面を広げて真剣に言った。
「名物として売り出しましょう。名前は《テルマハルト名物・温泉アント卵》。
効能は“疲労回復・滋養強壮”。ターゲットは旅人、兵士、冒険者。まずは王都の市場へ」
「名前も覚えやすい」
俺は頷いた。
「生産はアントダンジョンの安定運営が条件だが、ギルドを通せば供給できる」
「街道沿いの宿場に販売所を置くのもいいわ」
アリアが提案する。
「湯治客や行商人にとって、手軽なお土産になる」
「戦場の糧食、旅の保存食、土産物……使い道は山ほどある」
カインが笑みを浮かべる。
「ふふ、宣伝文句も考えましょう」
ミーナは帳面をめくる。
「“温泉に浸かって卵を食べれば、一日で疲れが飛ぶ”これでどうかしら?」
「悪くない」
俺は窓の星を仰ぐ。
「ダンジョン素材を“宝”として売るだけじゃなく、人々の暮らしに結びつける。それが領地を支える」
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名物誕生
翌朝。テルマハルトの広場には長い行列ができていた。
「これが新名物か!」
「土産に欲しい!」
「王都に持ち帰ったら高く売れるぞ」
ざわめきは確かな商機の響き。
湯気を立てる桶から次々と卵が取り出され、子どもが頬張り、旅人が袋に詰め、冒険者が財布を開く。
「見ろよ」
カインが呟く。
「昨日までただの温泉地だったのに、もう市場みたいだ」
「みんなの顔が輝いてる」
アリアが笑う。
「ここは本当に観光の地になる」
「ふふ、数字が並ぶのが楽しみね」
ミーナがにやり。
俺は胸の奥で小さく呟いた。
「これで、テルマハルトは本当に“観光の地”になる」
温泉の湯けむりの中、温泉アント卵の香りが未来を照らしていた。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




