たべるの?
クイーン討伐から数日。
俺たちは計画どおり、素材の“運用回収一日目”へ――再びアントの巣へ潜った。
「……相変わらず、広い」
アリアが弓を下げ、砕けた複眼のソルジャーを見下ろす。
「群れの統制は崩れてるけど、油断はしない」
「収穫は上々だぜ」
カインがずしりと袋を担ぎ上げる。
「ワーカーの外殻、今日だけで山盛り。鍛冶素材にもできるが……道に混ぜるのが一番効く」
「同意。で――」
ミーナが手帳をぱらりと開き、俺に目配せ。
「予定どおり、《真鑑定》で“ほかに使えるモノ”、確認よろしく」
「任せろ」
俺は視線を光らせ、巣の奥へと意識を滑り込ませる。
……白い。
……丸い。
……うねる山。
「――卵、だな」
息が喉で止まる。積み重なった、白い球体の塊。
「《真鑑定》」
【アントエッグ:コモン】
・高たんぱく/滋養強壮
・熱処理で毒性消失
・茹でると保存性向上
・摂取で疲労回復が促進
「食える」
即断して仲間に伝える。
「茹でれば安全、栄養価は高い。“疲労回復”の補助まで出た」
「食えるのか!?」
カインの目が丸くなる。
「いやでも見た目が……」
「わかる」
アリアがぷに、と指でつつく。
「スライム……いや、もちもちの……」
「でもね?」
ミーナが手をぱちん。
「“滋養”“保存性”ってキーワード、兵站にも商売にも刺さる。温泉で茹でて『温泉アント卵』――これ、看板メニューよ!」
「観光資源、確定だ」
俺は頷く。
「温泉×食は集客の王道。テルマハルトの旗にできる」
「試作いこう」
カインが一個取り出して渋顔のまま俺に渡す。
「トリス、収納。夜に温泉で茹でる」
「あいよ」
俺は素材と卵を《無限収納》へ。
⸻
夜。テルマハルト外れ、宿屋の裏庭。
囲炉裏、鍋、温泉の湯。準備は万端。
「投入」
ぽちゃん。白い卵が湯に沈む。
ぐつぐつ、ゆらゆら。湯気が立ちのぼり――
「……ほんとに食べるの?」
アリアが眉を寄せる。
「“魔物の卵”って字面が強いのよ」
「冒険者だろ?」
カインが肩を叩く。
「食えるもんは栄養だ。昔からそうだ」
「理屈は正しいけど……」
ミーナは困り顔で、でも目がきらきらしてる。
「(売れる匂いがする……!)」と顔に書いてある。
十五分。
卵がほんのり黄みを帯び、つるりと光沢――そして、ふっと、甘い香り。
「……いい匂い」
アリアが小さくつぶやく。
殻を割る。
ぺりり――つるん。
現れたのは淡黄色の半熟。とろりと揺れる黄身。温泉のやさしい塩気がまとわりつく。
「いただきます」
ひと口。
濃厚。
旨みが舌にのり、体の芯がぽうっと温まる。
筋肉が緩み、疲労がほどける――
「……うまい」
言葉がこぼれた。
「ほんと!?」
アリアもぱくり。
「……おいしい。予想外に上品。後味が軽い……!」
「栄養が体に流れ込む感じだ」
カインはごくんと飲み込み、腕をぶんぶん回す。
「力が戻る……軍用糧食で天下取れる」
「――これは売れる」
ミーナは手帳を抱きしめ、瞳が星みたいに。
「“温泉アント卵”。足湯+卵=回転率×客単価UP。朝は“温卵定食”、夜は“湯上がり半熟”。干し果物とセットで“甘塩バランス”。ポスターの文言は――」
「落ち着けミーナ、息して」
アリアが笑う。
「でも、私も二個目ほしい」
「三個目、俺も」
カインが手を伸ばす。
「殻は粉砕して畑へ戻せる。無駄がない」
「決まりだな」
俺は湯気の向こう、星を仰いで頷く。
「“温泉アント卵”はテルマハルトの特産にする。試食会はまず村内。安全確認は二段階――《真鑑定》と“俺たちの実食”。無理はしない」
「了解。供給計画は私が回す。保存は“塩水・茹で・干し”の三本立て。値付けは“まずは安く、リピートで回収”」
ミーナが一気に書き込み、ぱたんと手帳を閉じる。
「明日の看板、私に描かせて」
「縁石の卵刻み、やっとく」
カインがにやり。
「“ゆげ卵”の意匠で」
「ネーミングのセンスは……かわいいから許す」
アリアがくすっと笑った。
湯気の向こうで、モルネルが「もるっ」と胸を張る。
じんわり《聖癒光》が灯り、夜気がさらにやわらぐ。
「――決まりだ」
俺は二個目をぱくり。
体の奥から、また熱が灯る。
(これで、人が来る。人が笑う。村が回る。
卵ひとつが、未来を押し出す――)
鍋の中で、白い卵がもう一つ、ゆっくりと揺れた。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




