トリス領・グレインハルト村の水不足
「ハルトン村から半日ってとこか」
俺は馬車の前で手綱を握りながらつぶやいた。
「……空気が乾いてきたわね」
アリアが眉をひそめる。剣士のくせに、こういう景色には弱い。
「井戸の水は戻ったけど……畑全部には到底足りないわ」
ミーナは腰に手を当て、冷静に状況を見ている。
「これじゃ市場に出せる作物なんて望めない。領の財布にだって影響するわ」
「だから今日が正念場だ」
俺は足元の小さな仲間に目をやった。
「ネル、頼むぞ」
「キュイッ!」
ラットモールのネルが、ちょこちょこと駆け出し、鼻をひくひくさせる。
⸻
村に着くと、待ち構えていた農民たちが頭を下げた。
「トリス様!」「戻ってくださった!」
白髪まじりの村長ドノヴァンが前に出る。
「井戸の件は感謝してもしきれません。ですが……畑はまだ……」
彼は痩せた穂を差し出し、肩を落とした。
「……乾いてるな。でも――奥には、少し湿り気がある」
俺は土を握りしめながらうなずいた。
⸻
村の中央で深呼吸し、《真鑑定》を発動する。
地層が光に透けて見えた。
「……ここは違う。岩盤が厚い」
「じゃあこっちは?」
「細すぎる流れだ。畑は潤せない」
移動しては鑑定し、首を振る。村人たちの顔が不安で曇っていく。
だが――。
「……あった」
俺は畑の外れで立ち止まった。
「ネル、ここだ。深いが……お前なら掘れる!」
村人たちが息を呑む。
⸻
「ネル、行け!」
「キュイッ!」
ネルは地面を掘り進み、土が飛び散る。
「す、すごい……!」
「本当に掘ってるぞ!」
子どもたちが「がんばれー!」と声を上げる。ネルが尻尾を振り、さらに速度を上げた。
――ごおおおっ!
地鳴りとともに、水が噴き出した。
「で、出たあああ!」
「水だ!」
「ほんとに水だぁ!」
農民たちは歓喜の声を上げ、子どもたちは裸足で走り回る。
「神よ……」と老婆が涙を流し、ネルは誇らしげに泥まみれの顔を出した。
⸻
「これで畑が潤う!」
「子どもたちを養える!」
村長ドノヴァンが俺の手を握りしめる。
「トリス様……! これで我らは生きていけます!」
「生きるだけじゃないさ」
俺はきっぱりと告げた。
「この村は領地の柱になる。ここから収穫された穀物が、街道を通じて広がっていくんだ」
アリアが剣を肩に担ぎ、にやりと笑う。
「なら、私も剣じゃなく鍬を振るう時が来たかしら」
ミーナは肩をすくめる。
「交渉や流通は任せて。すぐに市場に繋げてみせるわ」
ネルが「キュイッ!」と鳴き、空を見上げた。
――グレインハルト村。
今、この地に確かな未来が芽吹いたのだった
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




