視察
新しい街道が完成したハルトン村は、これまでの静かな農村とはまるで別物だった。
道沿いには行商人が荷車を引き、子どもたちは舗装された道の上で走り回る。ワーカーアントの殻を砕いて混ぜた地盤は硬く締まり、雨上がりでも泥に足を取られることがない。
ネルがちょこちょこと走るたび、村人の子どもたちが群がって歓声を上げる。
「ネル様だ!」「ネル様、こっち掘って!」
「キュイ!」
灰色の毛玉が胸を張るように鳴き、尻尾をぶんぶん振った。
俺は微笑みながら、その光景を眺める。
(……あのアリの群れとの戦いが、こうして村を変えたんだな)
ハルトン村は俺の領地の中心になる。ここから街道を伸ばし、周囲の三つの村と結んでいく。それが俺に与えられた役目だ。
⸻
ロックハルト村
次に訪れたロックハルト村は、ストーンウルフの素材で活気づいていた。
家の土台や壁には、狼の外殻を加工した石材が組み込まれている。普通の石よりもはるかに丈夫で、ひび割れも少ない。
「おかげで雨風に負けない家ができました!」
職人が泥だらけの手を掲げ、笑顔を向けてきた。
「前は嵐のたびに屋根が飛んでましたからな……」
村人たちは皆、俺たちの馬車を囲み、深々と頭を下げる。
俺は慌てて手を振った。
「俺だけの力じゃない。カインが道具を作ってくれたおかげだ」
「兄弟子さん、すごいです!」エルムが目を輝かせて声をあげる。
「ふん、当然だ。だが、まだまだ改良できるさ」カインは照れ隠しに鼻を鳴らした。
⸻
グレインハルト村
次に足を運んだグレインハルト村は、深刻な問題を抱えていた。
「……水が足りず、土地が痩せてしまっているのです」
農夫が申し訳なさそうに頭を下げる。
俺は地面に手を当て、《真鑑定》を発動した。
土の奥深く、青白い帯のような光が微かに揺れている。――水脈だ。
(ある……けど深すぎるな。普通の井戸掘りじゃ届かない)
俺は隣に立つネルを見下ろした。
「ネル、頼めるか?」
「キュイ!」
灰色の毛玉は元気よく鳴き、鼻を土に突っ込んで掘り始める。
土煙が舞い、あっという間に穴が広がっていく。村人たちが固唾を呑んで見守る中――
ごぼっ、と音を立てて冷たい水が少し吹き出した。
「水だ!」「井戸ができたぞ!」
村人たちが歓声を上げ、駆け寄って水を掬う。
農夫は膝をつき、手を合わせて震えていた。
「これで畑が救われる……!」
ネルは鼻先を泥だらけにして俺の足元へ戻り、「キュイイ!」と鳴いた。
子どもたちが群がって抱き上げる。
「ネル様!」「ネル様ありがとう!」
俺は撫でながら、静かに息をついた。
(ネルがいる限りこの領地は渇かないな!ただ、まだ水量が少ない、より大きく井戸を今度作ろう)
「今度は準備をし、より大きな水源を作ることにする。第一優先で取り組むようにするよ」
村人達は期待の眼差しで見つめていた。
⸻
テルマハルト村
最後に訪れたテルマハルト村では、不思議な現象があった。
「この辺りの地面が、いつも温かいんです」
村人が地面を指すと、白い湯気が割れ目からうっすらと立ち上っていた。
俺は膝をつき、《真鑑定》を発動。
地中深くに、蒸気を帯びた巨大な水脈が広がっているのが見える。
「……温泉だ」
村人たちが歓声を上げる。だが、俺はすぐに首を振った。
「深すぎる。ネルでもまだ掘れない」
「キュイ?」ネルが首をかしげて掘り始めたが、数分で疲れて戻り、泥だらけの鼻を鳴らした。
「キュイイ……」
村人たちは笑ってネルを抱き上げる。
「いつかきっと、ネル様ならやってくれる」
俺は頷いた。
「その時は、ここを温泉の観光地にしよう。街道もある、人も来る。村の特産になるはずだ」
「おお……!」村人たちの目が輝き、希望に満ちた声が上がった。
⸻
ハルトン村 ― 会議
視察を終え、俺たちは再びハルトン村に戻った。
村長のトーマス爺さんをはじめ、三村の代表者たちが集まり、長机を囲んで会議が始まる。
「ロックハルトは石材、グレインハルトは農業、テルマハルトは……将来の温泉か」
俺は腕を組み、整理する。
「それぞれ強みがある。街道も完成した。これからは交易が重要になる」
「はい、そこで私から提案を」
ミーナがすっと立ち上がった。
「街道を利用して、余った作物や石材を他領へ売り、逆に肥料や加工品を買う仕組みを整えましょう」
「なるほど……!」村人たちが感心の声を漏らす。
「その橋渡しは、ミーナに任せたい」
俺の言葉に、彼女は少し照れたように微笑んだ。
「責任重大ですね。でも……やりがいがあります」
カインが腕を組む。
「俺は鍛冶場を広げる。農具でも武具でも作れるようになれば、村はもっと豊かになる」
エルムが勢いよく立ち上がった。
「僕は防衛です! 魔物から村を守る戦いなら、絶対に役立ちます!」
アリアは静かにトリスの隣に立ち、短く言い切った。
「守るのは、私の役目」
会議室に力強い空気が流れる。
俺は深く頷き、みんなの顔を順番に見渡した。
(――この領地はきっと変わる。俺たちならできる)
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




