表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/82

勝利と余韻

巨体が崩れ落ち、黒く濁った酸の塊が床いっぱいに広がった。

床石を焼くジジジ……という嫌な音とともに白い煙が立ち昇り、やがてその質量は光に変わり、わずかな残骸だけを残して霧散していく。


「……か、勝った……」


木剣を杖のように突き立て、トリスはその場に膝をついた。

腕は酸のせいで皮膚がひりつき、衣服はあちこち焦げて破れている。胸は荒く上下し、今にも酸素が足りなくなりそうだ。それでもあの巨体はもう動かない。


つい先ほどまで、逃げ場のない通路で、死と隣り合わせの戦いを強いられていた。

酸を浴びれば大怪我。踏み潰されれば終わり。

ただの木剣一つで挑むなど無謀にも程があった。だが、最後の最後、核の動きの癖を見抜き、命を賭けて突き込んだ一撃がすべてを決めたのだ。


床に残されたものに、トリスは目をやる。

そこには小さな結晶と、どろりとした濃い粘液がいくつか。


「……これは、素材か」


恐る恐る手を伸ばし、結晶を拾い上げる。

冷たい輝きが指先に伝わり、まるで心臓の鼓動のように淡く明滅する。

瓶を取り出して粘液を流し込むと、重たげな質感が手首にずしりとのしかかった。



【ドロップ入手】

・《濃縮スライム核の欠片》 ×1

・《高濃度スライム粘液》 ×2



無機質な通知のように頭の中に響く声に、トリスは小さく息を漏らす。

それは確かに冒険の証であり、命を賭けた対価でもある。


(これをギルドに持ち帰れば……少しは金になるはずだ)


金額にすれば、決して大きくはない。

孤児院で待つ子どもたちに腹いっぱい食べさせるには、とうてい足りない。

それでも、ほんのわずかでもいい。焼きたてのパンを一つでも持ち帰れるのなら――命を懸けた甲斐はある。


「……よし」


木剣を支えに立ち上がる。

足は震え、視界はまだ霞んでいる。

けれど瞳だけは、決して揺らがなかった。


暗い通路の奥を見上げる。

遠くで水滴が落ちる音が反響し、冷たい風が肌を撫でる。

深淵のような闇の中、ただ一人、少年の瞳だけが確かな光を宿していた。


(俺は、絶対に生き残る。何度でも、何度でも……!)


ふらつく体を無理やり前へと押し出し、トリスは帰路につく。

血と汗と涙で塗り固めた一歩一歩を踏みしめながら。

初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。

AIをとーても使いながらの執筆となっております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ