街道完成の喜び
数日の間、村は戦場のような忙しさに包まれていた。
だが、今回は魔物ではなく「街道」との戦いだ。
「こっちにワーカーの殻をもっと運んでくれ!」
「砕いた殻は水で流しながら土に混ぜろ! 固まりすぎると叩きにくいぞ!」
広場に積み上げられた大量のワーカーアントの外殻が、次々と砕かれ、粉状になって街道へと運ばれていく。
男たちが槌で叩き、女たちや子供たちも土をならすのを手伝っていた。
「ふう……。やっぱりアントの殻はすげえな。水が染み込まなくなってる」
農夫のレオンが額の汗をぬぐい、足で地面を踏み固める。
土は柔らかさを失い、締まりのある感触に変わっていた。
「こっちは土が余ってる! ネルを連れてきて!」
俺が声を張ると、少年たちが慌てて柵の奥へ走る。
数分後、土埃を巻き上げて現れたのは、丸々とした灰色の体毛に覆われたラットモールだ。
背中には簡易の革製の手綱がつけられ、誘導役の少年が声を張る。
「トリス様! 今日も元気です!」
「よし、こっちに掘らせて。余った土を凹んだとこに使うんだ!」
ラットモールのネルは「グルルル」と喉を鳴らし、巨大な爪で土をかき分けていく。
掘り返された土は脇に積まれ、それが段差の補強に活かされた。
「すごい……。本当に職人みたい」
アリアが目を細める。
「動きに無駄がないし、何より楽しそう」
「働いてるのに楽しそうってのがいいよな」
ディルが笑いながら肩を竦めた。
「おかげで俺たちは体力を温存できるし」
「いや、まだまだ叩いてもらうわよ」
ミーナが帳簿を片手に容赦なく言う。
「道は完成に近づいてるけど、仕上げは全員でやらなきゃ」
村人たちは一斉に「おおっ」と声を上げ、再び槌を振るった。
⸻
数日後。
ハルトン村の入口から森の向こうまで、一本の真新しい街道がまっすぐに伸びていた。
地面は固く締まり、水はけがよく、どこを踏んでも泥濘はない。
脇には排水路が通り、雨が降っても溢れない仕組みになっている。
「……できたな」
俺は街道を見渡し、深く息をついた。
あの戦いで得た素材と、ネルの働きがあったからこそだ。
「やったー! 本当に完成したんだ!」
孤児院の子供たちが両手を広げて走り出し、街道を駆け抜けていく。
「おい、転ぶなよ!」
ルークが笑いながら叫ぶが、子供たちは全然聞いていない。
「ネル! こっちこっち!」
ネルも一緒に土をかけるように走り、子供たちとじゃれ合う。
その姿に、村人たちから自然と笑みがこぼれた。
「これで王都までの交易が現実になる……!」
バルドが、震える声で言った。
「荷車も通れる、雨でも崩れない、立派な街道だ。これでハルトンは、ただの辺境の村じゃなくなるぞ!」
「道があれば人も来る。物も流れる」
ミーナが真剣な表情で帳簿を閉じる。
「村の商いは大きく広がるわ。これから忙しくなるわよ」
「ふふっ、忙しい方がいいじゃない」
アリアが弓を背負い直し、風に揺れる街道を眺める。
「戦いのためじゃなく、人を守るための道……悪くないわね」
俺は仲間の言葉を胸に刻み、刀《繋》の柄を握った。
(ここまで来た。
でも、これで終わりじゃない。
この道は始まりだ。俺たちの未来を繋ぐ道なんだ)
「宴だ!」
レオンが酒樽を掲げ、声を張った。
「道の完成祝いだぞ! 今夜は飲めや歌えだ!」
村人たちの歓声が夜空へ響き、篝火が焚かれ、広場は笑顔と歌声で満ちた。
その輪の真ん中で、ネルが子供たちに抱きつかれ、満足そうに喉を鳴らしていた。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




