アントの刃
ワーカーアントの外殻を道に撒くと、たしかに地面は締まり、荷車も沈まなくなった。
村人たちは歓声をあげたが、俺は別の可能性に目を向けていた。
(この殻……硬さは鉄に近い。道だけじゃなく、武器にもなるかもしれない)
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街道工事に合わせて、村の広場の片隅に小さな鍛冶場を作ってあった。
丸太で組んだ簡易な屋根の下に、炉と作業台、それに村の鍛冶道具をかき集めて並べたものだ。
斧の修繕や釘の打ち直しのために設けた場所だったが、今は別の役割を果たそうとしていた。
炉に火をくべると、薪のはぜる音と共に赤い炎が立ち上る。
「トリス様、何を作るんですか?」
手伝いに来ていた若い農夫が首をかしげる。
「アントの殻を試す。あれが鉄以上に硬いのか、確かめてみたい」
砕いた殻を火床に入れると、じわじわと赤みを帯びていく。
完全には溶けないが、叩けば形を変えられそうだった。
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槌を振り下ろすと、硬い音が響く。
「ガンッ! ガンッ!」
一度ではびくともしない。だが何度も叩き込むうちに、外殻の塊は平たくなり、鋭い縁を持ちはじめた。
「これは……刃になる」
手にした木の棒の先に固定し、即席の槍を作る。
俺は壁に立てかけてあった古い木片に向かって突き出した。
バキィン!
木片は真っ二つに裂け、周りで見ていた村人たちが息を呑んだ。
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「な、殻が槍になった……!
「鉄に負けてねえぞ!」
「これなら俺たちでも魔物と戦えるじゃないか!」
農夫も狩人も、目を輝かせていた。
道を固める資材であると同時に、武器の素材にもなるとわかったのだ。
「街道を作るだけじゃない。村を守る力にもなる」
俺の言葉に、皆が大きく頷いた。
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翌日。
村人たちは昨日に増して活気に満ちていた。
ワーカーアントの殻を砕き、土に混ぜ、道はさらに先へと伸びていく。
「よし、今日中に森の入口まで繋がるぞ!」
「殻さえ集まれば何とかなる!」
そんな中――。
「出たぞ! 蟻だ!」
斥候の叫びに、全員の手が止まった。
木陰からギチギチと顎を鳴らし、再び《ワーカーアント》が三匹現れたのだ。
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「今度は俺にやらせてくれ!」
そう名乗り出たのは狩人のガイルだった。
昨日、俺が作った《アント槍》を握りしめている。
「待て、危険だ!」
「大丈夫だ。あんたが作った槍を試してみたいんだ!」
そう言って前へ躍り出る。
アントが突進してくる。
その巨体に圧倒されながらも、ガイルは大きく息を吐き、構えた。
「うおおおっ!」
突きが決まった。
槍先は甲高い音を立て、関節を正確に貫いた。
「効いた……!? 本当に通るぞ!」
アントが痙攣し、動きを鈍らせる。
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「俺もやる!」
「この槍ならいける!」
新たに作った数本の《アント槍》を手に、若者たちが次々と飛び出していった。
鋭い切っ先が次々と魔物の脚を貫き、やがて三匹すべてが地に伏した。
「勝ったぞ!」
「槍が本当に効いた!」
「これなら俺たちでも戦える!」
村人たちの歓声は、昨日よりも大きく、力強かった。
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エルムも目を輝かせて駆け寄ってきた。
「トリス様! 本当に武器になりましたね!」
「そうだな。殻は資材にもなるし、武器にもなる。
――これで村は、もっと強くなる」
俺の言葉に、村人たちは拳を突き上げた。
「道を作れ! 魔物を倒せ! 村を守れ!」
街道整備と魔物討伐。
その二つが、同時に村を前へ進める。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




