街道整備 新たな素材
朝露に濡れた草を踏みしめ、村人たちが次々と集まってきた。
木こりの屈強な男たち、狩人、農夫、女や子供まで。誰もが斧や鍬、荷車や縄を手にしている。
「今日は街道工事の日だ!」
「王都と繋がれば、この村も変わる!」
気合いの声が広場を揺らしたが、実際に始まってみれば混乱ばかりだった。
「丸太が重すぎて運べねえ!」
「石を置いたらすぐ崩れるぞ!」
「おい、そっちに倒すな! 危ない!」
ドカン、と木が倒れる音。枝葉が散り、悲鳴と怒声が交錯する。
このままでは、ただの大騒ぎで終わってしまう。
「一度止まってください!」
俺――トリスは手を叩き、大声で呼びかけた。
⸻
《鑑定》を使い、村人一人ひとりを確認する。
腰を痛めているヨナには杭打ちは無理だ。
「ヨナさんは軽作業をお願いします。石や木材の仕分け役で」
「わ、わかったよ」
力自慢のカルロは荷車押し。器用なサラとロナは食事係に。
「腹が減っては力が出ません。みんなを頼みます」
「任せて!」
次々と役割を割り振ると、混乱していた作業が少しずつ整い始めた。
木こりは木を倒し、農夫は鍬で均し、狩人は石を積む。
「おお、さっきより進んでる!」
「道の形が見えてきたぞ!」
村人たちの顔に希望の光が宿り始めた――その時。
森の奥から、ギチギチと不気味な音が響いた。
⸻
「……なんだ?」
誰かが呟いた瞬間、木陰から黒光りする影が現れた。
腰ほどの高さを持つ巨大な蟻。《ワーカーアント》。
顎をギチギチと鳴らし、さらに二匹、三匹と続いて姿を現す。
「ひぃっ!」
「魔物だ! 逃げろ!」
村人たちが慌てて後退する。
荷車が横倒しになり、石が転がる音が響いた。
「くそっ、よりによって今か……!」
俺は木剣を構えた。
だが、その前に小さな影が立ちはだかった。
「僕が……やります!」
エルムだった。
まだ幼さの残る顔に、恐怖で唇が震えている。
だが槍を握る手は、決して下がらなかった。
「エルム、下がれ!」
「トリス様……僕、逃げません!」
その瞳に宿った決意は、本物だった。
⸻
ワーカーアントが突進してきた。
地面が揺れ、顎がギチギチと鳴る。
エルムは震える膝で必死に立ち、槍を突き出した。
だが――ガキィン!
槍先は外殻に弾かれ、土に突き刺さった。
「うそっ……!」
小さな声が漏れる。顎が振り下ろされ、槍ごと押し潰されそうになる。
「エルム!」
俺とアリアの声が飛んだ。
エルムは必死に体をひねり、槍を滑らせた。
土煙の中で、必死に魔物の体を見極める。
「どこか……どこかに……!」
その目が、顎の付け根、脚の関節の隙間を捉えた。
「ここだああっ!」
渾身の突き。
槍先が首の関節に深く突き刺さり、アントが悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……!」
肩で息をしながら振り返るエルム。
「トリス様……僕、やれました!」
「よくやった。怖くても逃げなかった。それがお前の強さだ」
俺ははっきりと答えた。
村人たちから歓声が上がった。
「エルムがやったぞ!」
「ガキが魔物を倒した!」
幼い少年の一撃が、みんなを守ったのだ。
⸻
戦いが終わると同時に、俺は《鑑定》を発動した。
【鑑定結果】
・外殻:砕いて土に混ぜると水捌け改善。地盤が締まる。
・体液:乾燥すると固化し、土をまとめる性質。
「……これは使える!」
すぐに外殻を砕き、ぬかるんだ道に混ぜてみる。
じわりと水が引き、土が締まって硬くなっていく。
荷車を通すと、沈まずにすいすい進んだ。
「すげえ!」
「これなら道が崩れない!」
「雨でも大丈夫だ!」
村人たちの顔が一斉に輝いた。
「見てください、トリス様! 本当に道になってます!」
エルムが泥だらけの顔で笑い、槍を掲げた。
俺は彼の頭に手を置いた。
「お前の一突きが、この村に希望を運んだんだ」
「えへへ……僕、もっと頑張ります!」
歓声が広がり、村は希望に包まれた。
街道は、確かに前へ進み始めたのだ。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




