街道整備の始まり
昼下がりのハルトン村。
広場に村人たちが集まり、誰もが不安げな顔をしていた。井戸の問題は一応解決したものの、これからどう暮らしていくか、答えはまだ見えていない。
切り株を壇代わりにして、バルドが咳払いをする。
「皆もわかっておるだろう。このままでは冬を越せん。畑は荒れ、商人は来ない。原因は道じゃ。ぬかるんで馬車が通れぬ」
村人たちがざわめいた。
「道を整えるって、俺たちにできるのか?」
「今でも仕事で手一杯だぞ……」
その不安の中で、俺――トリスは一歩踏み出した。
「やるしかありません。道を整えれば、村は生き返ります」
静まり返った広場に、はっきりと声が響く。十五歳の俺に注がれる視線は重かったが、逃げるつもりはなかった。
「道ができれば、商人はもっと来ます。食料も、道具も。村が変わるんです」
皆が黙り込んだその時、小さな声が割って入った。
「ぼ、僕もやります!」
声の主はエルム。まだ十三歳の少年だ。
小柄で痩せ気味、背丈も低く、大人の人混みではほとんど埋もれてしまう。だが、手にした槍をぎゅっと握りしめ、その瞳は輝いていた。
「力仕事はできないけど……でも、魔物が出たら僕が突きます! この前だって、スライムに一突き入れたんですから!」
「ガキが調子に乗るな」
誰かが笑い飛ばした。
だが別の男が小声で言う。
「……でも、確かにあれは刺さったんだ。見たんだよ、俺」
「う、うん! 一回だけだったけど、ちゃんと刺さった!」
エルムは顔を真っ赤にして胸を張る。その必死さに笑いが漏れたが、同時に誰も彼を完全には否定できなかった。
俺は一歩近づき、言葉をかけた。
「エルムはまだ子供だ。でも、その分未来がある。戦える時には俺やアリアが守る。その時に、お前の槍を振るえばいい」
「……うん、トリス様!」
エルムはぱっと笑った。幼い顔に宿る決意は、確かに本物だった。
⸻
「丸太を切ればいいんだな!」
「石は川辺にあるぞ!」
「けど、人手が足りんだろ!」
声が飛び交い、まとまりがなくなる。
杖を手にしたミーナが前へ出た。
「静かに。資源はあるの。足りないのは分配よ」
彼女は杖で地面に線を引き、村から街への道筋を描く。
「丸太を切る人、石を集める人、運ぶ人……役割を分ければ無駄は減るわ」
俺は頷いて言葉を継いだ。
「さらに俺が《采配》で補助します。誰がどの仕事に向いているかを見極めれば、効率はもっと上がります」
人々は顔を見合わせ、やがて静かにうなずいた。
⸻
翌日から、村総出で準備が始まった。
木こりは森で斧を振るい、若者は川辺で石を集める。荷車がぎしぎしと軋みを上げ、汗の匂いが村を包む。
「よいしょっ……! 僕だってこれくらいなら……!」
エルムは必死に丸太を転がしていた。小柄な体では大人に敵わないが、その額には大粒の汗が光っていた。
「無理するなよ、エルム」
俺が声をかけると、彼は顔を赤くして叫ぶ。
「だ、大丈夫です! トリス様に迷惑はかけませんから!」
その姿に、周りの大人たちが思わず笑みを浮かべた。
「しょうがねえな、あのガキは」
「でも、ああいうのが村を支えるようになるんだろうな」
俺も心の中で思った。
(まだまだ子供だ。でも、この村の未来を背負う一人になる――必ず)
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




