水の祝宴
井戸から噴き出した水は、夕陽を受けてきらきらと輝いていた。
村人たちは歓声を上げ、誰もがその光景を信じられない顔で見ている。
乾いた土地に、久しぶりの命の音。井戸の底からこんこんと溢れ出る水は、まるで村全体を祝福しているみたいだった。
「……やったな」
思わず俺も呟いた。肩はまだびしょ濡れで冷たいけど、不思議と心は熱くてたまらない。
「トリス様ぁぁぁ!」
最初に飛びついてきたのは、もちろんエルムだ。槍を抱えたまま駆け寄り、涙と汗でぐちゃぐちゃの顔を俺に向けてくる。
「僕……僕、当たったんですよ! 本当に!」
「見てた。あれでみんな勇気づけられたんだ。よくやったな」
頭をくしゃりと撫でてやると、エルムは顔をくしゃくしゃにして笑った。
子どもがこんなに頑張ったんだ。村が盛り上がらないはずがない。
「おお、ほんとに水だ……!」
「触れる! 冷たい! ありがてえ!」
村人たちが次々と桶や壺を持ち寄り、両手で水をすくっては飲み、顔を洗い、涙を流していた。
「落ち着いて!」
俺は声を張った。
「まずは子ども、病の者、母になる人を先に! 力ある者はあとでだ!」
《采配》が自然と働き、みんなの視線が揃う。
「おお、そうだな」「子どもを先に!」と声が返り、整然と列ができていった。
……よし。水を手に入れるだけじゃ駄目だ。公平に、安心して分け合えなきゃ意味がない。
「トリス様!」
バルドが震える声で俺に近づいてきた。
「これは……まさか本当に水脈が……! 先代でもできなかったのに……」
「俺ひとりの力じゃありません。カインが道具を整えてくれて、アリアが守ってくれて、エルムが突いてくれて……みんなで掘った井戸です」
わざと大きめに言った。聞いていた人々の目が一斉にエルムに向かう。
「すごいぞエルム!」「若いのにやるじゃないか!」
「ハルトンの守り手だな!」
エルムは顔を真っ赤にして、必死に槍を握りしめていた。
……この子はきっと、もっと強くなる。そんな未来が見えた気がした。
⸻
夜。
広場には火が焚かれ、村中の人が集まっていた。
普段は節約している肉も、この日ばかりは惜しみなく焼かれる。
簡素な酒も回り、笑い声と歌声が夜空に響いた。
「これぞ祝宴ってやつだな」
カインが豪快に肉をかぶりつきながら笑った。
「お前の刀《繋》もよく働いた。今度、もっと魔力の通りを良くする刻みを入れてやる」
「頼む。あれがなかったら、勝てなかった」
「おう、楽しみにしとけ」
アリアは火のそばで黙々と食事をしていたけど、ちらりと俺を見ると一言。
「……よくやった」
それだけ言って、また視線を皿に戻した。
素直じゃない。でも、それがアリアだ。
「トリス様、これ、飲んでください!」
村の女の子が木の椀を差し出してくる。中には新しい井戸の水。
「ありがとう」
口に含むと、冷たくて甘い。こんなにうまい水を飲んだのは初めてかもしれない。
「領主様ぁ!」
「トリス様ぁ!」
あちこちから声がかかる。
でも俺は首を振った。
「俺だけじゃない。みんなが掘った井戸だ。……これからも一緒にやっていこう」
「おおーっ!」
歓声と拍手が広場を揺らす。
⸻
夜も更け、火が小さくなった頃。
エルムは槍を抱えたまま眠っていた。
アリアは空を見上げ、カインは刀の形を思案している。
バルドは酒に赤らんだ顔で、「村が救われた」と何度も呟いていた。
俺は少し離れて、刀「繋」を膝に置き、火の明かりに照らして眺めた。
……ほんの一瞬だけど、斬った時に刃が光った気がした。
気のせいかもしれない。でも、ただの鉄の刀じゃない。
俺とカインとで作ったこの刀は、これからもっと進化する。
「……守りたいものが、また増えたな」
井戸の水音は、まだこんこんと続いていた。
村人たちの笑顔と声が重なり合い、この夜はずっと、忘れられないものになった。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




