十四の夏 ―《繋》誕生―
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
修行を始めて三年。
十一の夏に工房の戸を叩いた俺は、今や十四歳。
火に慣れ、槌を振るう腕は力を増し、豆は硬くなり、火傷の跡も刻まれたままだ。
それらは痛みではなく、努力の証。
工房の熱気は、俺の日常になっていた。
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「今日は特別だ」
ガルドの低い声に、背筋が伸びる。
「お前に“自分の刃”を打つ許しを与える」
心臓が跳ねた。
弟子が一人前として認められる第一歩
"自分の刃を打つ"
「材料はただの鉄だ。まずは名のある金属に頼るな。
お前の目と腕で、鉄を“お前の刃”に変えてみせろ」
「相棒、いよいよだな」
カインが笑い、肩をぶつけてくる。
「選鉄と下拵えは俺がやる。火の番と面出しはお前。仕上げは一緒に見る。合作だ」
「……ありがとう」
胸の奥で緊張と期待が弾けた。
(俺とカインの、最初の一本だ)
アリアは腕を組み、少し誇らしげに笑う。
「三年分の努力を、形にするときね。……見届けるわ」
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炉に鉄を入れ、鉄の呼吸を読む。
赤から橙、そして黄へ。
三年間で培った感覚が、はっきりと告げてくる。
「今だ!」
火箸で取り出し、台に置き、槌を振り下ろす。
ガンッ! ガンッ!
「迷うな、トリス!」
「分かってる!」
カインと息を合わせ、火花の雨の中で叩き続けた。
やがて一本の刀が、台の上に横たわった。
「……できた」
手に取ると、粗削りで重く、形も歪だ。
刃文も浅く、全体のバランスはまだ拙い。
それでも間違いなく、俺たちの手で打ち上げた「自分の刀」だった。
「形にはなったが、まだ“刃”と呼ぶには程遠い」
ガルドの声は冷ややかだった。
だがその瞳の奥に、確かに光が宿っていた。
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「トリス」
ガルドが木剣を手に取り、俺に差し出す。
「刃は振るう者のためにある。使う目を持たねばならん」
「……はい」
俺が構えた瞬間、木剣が風を裂いた。
次の刹那――ガァンッ!
荒削り刀が痺れる衝撃。足が滑り、腕が軋む。
十合、二十合。
剣がぶつかるたび、息が詰まり、膝が折れそうになる。
だがガルドは、わずかに手を動かすだけ。
一切無駄のない剣筋。
荒削り刀をいとも容易くいなし、押し、叩き伏せてくる。
(な、なんだ……この重み……!)
剣がぶつかるたび、肩から背まで全身を押し潰される感覚。
ただの木剣なのに、岩山を受けているかのようだった。
「どうだ。刃を振るう者に、どれほどの重みがかかるか分かったか」
「……はい!」
「なら忘れるな。刀は飾りではない。命を預けるものだ」
その言葉は、火より熱く、冷たい剣より鋭く、胸に突き刺さった。
夜。
手は腫れ、腕は動かなくなったが、心だけは燃えていた。
(これが、“使う者の目”……!)
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数か月後。
再びガルドが告げた。
「トリス。カイン。次は本番だ」
差し出されたのは、炉に眠っていた高純度な鉄
「お前たち二人で一本を打て。名を刻め。
――これから出会う仲間と未来を繋ぐ刃を」
「《繋》……だな」
カインが呟いた。
「……うん」
胸が震えた。
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炉が唸り、鉄が呼吸する。
赤から橙、黄、そして白に近い輝き。
俺とカインは何度も槌を合わせ、火花の中で声を掛け合った。
「今だ、打て!」
「分かってる!」
火箸で翻し、槌を振り下ろす。
音は旋律、汗は雨、火花は星屑。
全身が炎と鋼の中に溶けていく。
アリアが見守る中、俺たちはただ打ち続けた。
やがて一本の刀が、台の上に横たわった。
細身ながらしなやかで、鋭い斬撃を宿す形。
刃に魔力を流せば、青白い光が走る。
「……これが」
「俺たちの刀、《繋》だ」
ガルドは無言で頷いた。
その眼差しは、ただ静かに誇らしかった。
⸻
夜。
炉の火が落ちた工房で、《繋》を見つめた。
荒削りの練習刀は壁に掛けられている。
粗いが、あれがあったからこそ《繋》を打てた。
「トリス」
カインが隣に立ち、刀を見やる。
「これからも鍛え続けよう。刃も、俺たちも」
「……ああ」
アリアが笑って頷いた。
「この刀は、仲間を繋ぐための刃よ。あなたたちに、ぴったり」
俺は柄を握り直し、深く息を吐いた。
仲間と共に打った刀。
仲間と未来を繋ぐ刃。
十四歳の夏、俺は――《繋》と共に歩き出した。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




