大規模激戦・アリアの剣と弓
森の空気が一段と濃くなる。
湿った匂いが鼻を刺し、鳥の声も消えていた。
鬱蒼とした枝葉の隙間から射す光は細く、まるで戦場だけが閉ざされた箱庭のようだった。
「……気配、増えてる」
アリアが低く言った。弓を構えたまま矢をつがえ、視線を森の奥へ走らせる。
その言葉に呼応するように、地面がざわりと揺れた。
茂みを押し分け、次から次へと影が吐き出される。
ゴブリンだ――大小入り混じり、二十や三十では効かない。牙と棍棒、錆びた刃が乱立し、空気そのものが荒れ狂う。
「くそっ、数が違う!」
ルークが盾を正面に構える。
ディルが舌打ちし、短剣を逆手に構え直した。
「ミーナ、できるだけ数を減らせ!」
ルークの声が飛ぶ。
「了解!」
ミーナが杖を掲げ、詠唱に入った。
「〈ウィンドカッター〉!」
空気が裂け、鋭い風の刃が放たれる。三体のゴブリンを一度に斬り裂き、倒木の上で絶叫させた。
⸻
「来るぞ!」
ルークの号令と同時に、ゴブリンの群れが雪崩のように突っ込んできた。
「下がれ、後衛!」
盾がぶつかり、棍棒が弾かれ、金属音と悲鳴が入り混じる。
アリアは矢を三本まとめて握り、矢筒から次々とつがえる。
一射、二射、三射――矢は喉、胸、眼窩へ正確に突き刺さる。
だが敵は減らない。矢を射抜かれても仲間の死体を踏み越え、吠えながら迫ってくる。
「多すぎる!」
トリスは石を投げ続ける。額、足首、こめかみ――狙いを切ることで敵の勢いを削ぐ。
だが、投げても投げても埋まってしまう。
「アリア、弓だけじゃ持たない!」
ルークの叫びに、アリアは眉を寄せた。
「わかってる!」
弦を最後まで引き切り、鋭く放つ。矢はゴブリンの頸動脈を裂き、そのまま弓を肩に背負った。
「剣に切り替える!」
一瞬で細身の剣を抜き放つ。
踏み込んだアリアの動きは、弓を引くときの静けさとは違い、稲妻のように速かった。
一閃――首が飛び、返す刃で二体目の胸を裂く。
三体目の突きを身体をひねってかわし、反撃の一撃で顎を断ち割った。
「っ……すげぇ」
トリスの口から声が漏れた。
⸻
「右に抜ける!」
アリアは声を張り上げ、素早く下がりながら再び弓を構える。
剣で斬り払いながら距離を稼ぎ、矢をつがえ――放つ。
矢は一直線に飛び、仲間の盾の死角から迫っていた一体のこめかみに突き刺さった。
「近接も遠距離も……同時にやってるのか!」
ディルが半ば呆れた声を上げる。
「集中しろ!」
ルークが盾を押し出し、ディルを前へ引き戻す。
「アリアは万能だ。それで隊が持つ!」
⸻
「〈ファイアスパーク〉!」
ミーナが別の呪文を唱え、火花が爆ぜる。
ゴブリンの顔を焼き、焦げ臭い煙が立ち込めた。
隙をついたルークが一歩前に出て、盾で押し崩し、剣で二体を串刺しにする。
「トリス! 左前、二体!」
「うん!」
石を連投。片方は額を打ち抜き、もう一体は足首を砕かれて転倒した。
そこへアリアが駆け込み、剣で一閃。二体同時に絶命した。
「いい目だ!」
アリアが短く言うと、すぐに弓を引き直し、さらに奥の敵を撃ち抜いた。
⸻
戦場は混沌だった。
盾が押され、剣が打ち合い、矢が飛び、魔法が爆ぜる。
ゴブリンは数で押し潰そうとし、人間たちは連携でかろうじて食い止める。
トリスの視界に入ったアリアの姿は、まるで二人分の戦士だった。
前線で剣を振るい、後衛に下がって弓を射り、再び前へ――その動きは絶え間ない。
「万能って、こういうこと……」
トリスは小さく呟いた。
⸻
だが、まだ終わりではない。
群れの奥から、低い唸りが重なった。
木々が揺れ、大きな影がいくつも姿を現す。
「デカい……!」
ルークが歯を食いしばる。
そこにいたのは、背丈が一回り大きいゴブリンたち――ホブゴブリンだ。
普通のゴブリンとは明らかに違う、重い気配をまとっていた。
「全員、気を抜くな! これからが本番だ!」
ルークの怒号に、仲間は武器を握り直した。
トリスも石を拾い、小刀を握り直す。
アリアは矢羽を指でなぞり、剣を横に構えた。
「弓も剣も、全部使う。――一体残らず沈める」
その瞳には、決して折れない光が宿っていた。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




