表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼き都、動き出す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

265/284

紅晶操手《クリムアーキスト》の前夜

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

44層を突破したあとも、紅晶の残滓はしつこく床に残っていた。

 蒼晶洞の青い光は弱まり、かわりに赤い呼吸のような明滅が奥へ奥へと続いている。


「……あれが、45層の入口ね」


 アリアの声は小さかった。

 洞窟の奥――黒いアーチのように口を開けた空間。

 その境界から、蒼晶と紅晶がせめぎ合う音 が“かすかに聞こえる”。


 パキ……パキ……


 氷ではない。

 蒼晶の結晶が割れ、紅晶が侵食する音。


「蒼晶の層で、これは異常すぎるわ」

 ミーナが魔導計を握る手を少し震わせた。


 数値は壊れたように乱高下している。


「紅晶の濃度……43層の三倍以上。

 ここまで高密度の“侵食区域”なんて、本来ありえないの」


「つまり、“誰か”がやってるのか」


 俺が言うと、ミーナは静かに頷いた。


「うん。自然現象じゃない。

 これは“意図的な紅晶化”よ。

 紅晶の魔力を引き上げて、蒼晶洞そのものを染めようとしてる」


「……操ってる存在がいるんだな」


 アリアが弓を握る手に力を込めた。


「魔族……とか?」


「可能性はゼロじゃない。

 ただ、証拠はまだ薄い。でも――」


 ミーナが指差す。


 45層の黒いアーチの内側、

 蒼と紅が争う境界に、明らかに“人工的な模様” が浮いていた。


 ◆Δ◇Λ

 そんな文字にも幾何学にも見える、見たことのない“魔紋”。


「魔族語にも、古代語にも一致しない……。でも、魔力の癖だけは一つわかる」


 ミーナが魔力糸を伸ばし、紋を触れた。

 瞬間、赤い火花が走る。


「っ……!」


 アージェが前に飛び出し、ミーナの前で障壁を展開した。


「大丈夫かミーナ!」

「だ、大丈夫……! ただ、これは……強制支配の魔紋」


「支配……?」

 トリスが目を細める。


「紅晶を、誰かの魔力で“操ってる”の。

 さっきの紅晶傀儡も、たぶんこの紋から生成されてる。

 つまり――」


「この先に、“操ってる本体”がいるんだな」

 アリアが静かに言った。


「うん。この層のボスは、魔物じゃなく……“操手”」

 ミーナが紅晶の揺らぎを見る。


「45層の名前、仮に付けるなら……

 ――紅晶操手クリムアーキスト


 全員が息を飲む。


 ノクスは影の中で耳を伏せ、

 ルメナはトリスの肩にしがみつくように羽を縮めた。


 アージェだけが前に出て、喉の奥で低く唸り声を鳴らす。

 それはまるで「やるしかない」と言っているようだった。


「行けるか、みんな」


 俺が問うと、全員の視線が重なった。


 アリアは強気の笑みを、

 ミーナは静かに決意を、

 ノクスは影を鋭く伸ばし、

 アージェは地面を蹴る準備をし、

 ルメナは胸の光を強くした。


「決まりね」

 ミーナが杖を握り直す。


「45層の奥に“紅晶の操手”がいるなら……

 蒼晶洞を取り戻すために、今ここで止めるしかないわ」


 アリアも頷く。


「このダンジョンはトリス領の心臓部。

 好きにさせるわけにはいかないよ」


「問題ない、俺たちならいける」

 トリスは刀《繋》を握り直した。

 雷が小さく散り、紅の光を押し返す。


 蒼光と紅光がぶつかり合う境界。

 それはまさに“戦場の前”そのもの。


「行くぞ。蒼晶洞を守るために――

 紅晶操手クリムアーキストを叩き潰す」


 赤い風が吹き抜ける。


 45層の扉が、音もなく開いた。

応援ありがとうございます!

皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و

「次話も楽しみ!」と思っていただけたら、ポチっとお星★様を押してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ