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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼き都、動き出す

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紅晶の門を越えて

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

 階段を下りた瞬間、空気の重さが変わった。

 熱い――だが炎の匂いはない。

 肌にまとわりつくのは、蒼晶特有のどこか澄んだ冷気ではなく、

 猛々しく赤く燃えるような熱の波だった。


 壁を覆う結晶は、すべて紅に染まっていた。

 かつて青く光っていた蒼晶が、

 今は心臓の鼓動のように規則的に明滅している。


「……色だけじゃない。魔力の性質そのものが違う」

 ミーナが魔導計を展開する。

 針が振り切れ、盤面に薄い霜が走った。

「蒼晶が“変質”してる。安定していた魔力が逆流してるのよ」


 アリアが弓を構えたまま、前方を見据える。

「音が吸い込まれてる……。反響が消えてるわ」

「魔力の流れが空間を歪めてるのかもしれん」

 トリスは刀《繋》に手をかける。


 その時だった。

 カチリ、と乾いた音。

 前方の岩壁に、細い亀裂が走った。


 紅い光が滲み出す。

 そして、ゆっくりと――裂けた。


 中から這い出てきたのは、

 全身を紅晶で覆われた大型のトカゲだった。

 体長は四メートルほど、鋭い爪と尾が赤く輝いている。

 蒼晶の反応は一切ない。

 それは完全に“別の魔素”で動いていた。


「紅晶リザード……?」

 ミーナが眉をひそめる。

「生命反応はあるけど、魔力の構成が――他のリザードよりなんか不自然。まるで外から注入されたみたい」


 リザードの眼が光った。

 次の瞬間、口から紅色の閃光が放たれる。

 ブレス――否、熱線だった。


 トリスが前へ出て刀を抜く。

 雷光が刃を走り、熱線を弾き返す。

 弾かれた火花が床に落ち、蒼晶が焼けるように変色した。


「蒼晶が……紅に染まった!?」

 アリアが矢を放つが、紅晶の外殻が火花を散らして弾いた。


「硬い……! 通らない!」

「外殻の密度が高すぎる。まるで金属だわ!」

 ミーナが警告を叫ぶ。


 リザードが尾を振るう。

 紅晶が床から飛び出し、槍のように伸びる。

 アージェが咆哮して前へ出て、衝撃波で押し返した。

 ノクスが影を走り、尾の死角へ回り込む。


 だが、紅晶の破片が宙を漂い、

 まるで磁力に引かれるように再び本体へ戻っていった。


「……自己再生。外殻ごと再構成してる」

 ミーナが歯を噛む。

「でも、再構成には一瞬の隙があるはず!」


 トリスが短く息を吐いた。

「なら――その隙をもらう!」


 刀に雷が集まり、青白い稲光が紅を裂く。

 一閃。

 紅晶が砕け、内部の柔らかな組織が露出した。


「アリア!」

「任せて!」


 矢が放たれる。

 雷の矢が心臓部に突き刺さり、

 リザードがけたたましい咆哮を上げた。


 全身が震え、紅晶の鎧が一気に崩壊する。

 破片が霧のように散り、床に紅の残滓だけを残した。


 静寂。

 洞窟に、再び熱が戻る。


 ミーナが膝をつき、紅晶の欠片を拾い上げる。

「これは……蒼晶の構造を部分的に保ってる。

 でも、核が違う。蒼ではなく、何か“外の因子”が入り込んでる」


 トリスは黙って頷いた。

 刀の刃先に付着した紅の粉が、じわりと溶けて消える。


「この紅晶、自然発生じゃない。

 何かが蒼晶を“変えた”んだ」


 奥の通路から、低い振動が響いた。

 まるで遠くで岩が軋むような音――だが、周期が一定ではない。


「……まだ終わってないみたいね」

 アリアが弓を構え直す。

 トリスは刀を握り、前を見据えた。


「進もう。この変質の正体を突き止める」


 紅晶の光が、通路を脈のように照らす。

 その先に、何かが“待っている”気配だけがあった。

応援ありがとうございます!

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