紅き波、再び洞へ
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朝のハルトンは、蒼晶塔の光で染まっていた。
いつもの朝よりも淡く、そして少しだけ赤い。
それは、前夜に観測された「紅晶化」の兆候。
ミーナの研究報告が、街中に緊張を走らせていた。
「やっぱり塔の反応、収まらないのね」
ミーナが報告書を閉じ、ため息をつく。
「蒼晶の波長が揺れてる。まるで誰かが、下から引っ張ってるみたい」
「つまり……紅晶の根は、まだ地中にある」
トリスが腕を組む。
「このまま放置すれば、いずれ塔そのものが紅に染まるかもしれない」
アリアが弓を肩に担ぎ、笑う。
「結局、行くんでしょ? あんた、もう目が戦いモードだもん」
「……否定はしない」
トリスは微笑んだ。
「紅晶化が進めば、魔物の性質も変わる。早めに止めないと手遅れになる」
「ルメナ、どう思う?」
ミーナが問いかけると、肩の上の海竜が小さく“キュルッ”と鳴いた。
その瞳が淡く光る。――“行こう”と言っているように。
ノクスが影の中から姿を現し、尻尾を揺らす。
アージェが低く唸り、準備万端の空気が漂う。
「よし、決まりだな」
トリスは刀《繋》の柄に手を置いた。
「次の目的は紅晶の発生源。
おそらく、蒼晶の成長を歪めている“異質核”の除去だ」
ミーナが頷く。
「紅晶は蒼晶の“影”のような存在。
だから、根を断てば必ず蒼は戻る」
アリアが軽く拳を打つ。
「んじゃ、さっさと行こうか。“ダンジョン再突入”、ね」
「今度は紅晶の根まで辿り着く」
トリスの瞳に、決意の光が宿った。
⸻
ダンジョン入口。
蒼晶の光が霧の中でゆらめき、地響きのような鼓動を響かせている。
その奥から、かすかに赤い影が混じって見えた。
「……やっぱり、広がってる」
ミーナが呟く。
「紅晶が蒼晶を喰ってる。――もう、時間がない」
トリスは深く息を吸い、仲間たちを見渡した。
「行こう。第41層、原因を見つけるぞ!」
刀を抜く。
稲光が走り、霧を裂いた。
ノクスが影へ溶け、アージェが前へ踏み出す。
ルメナの光が頭上を舞い、蒼と紅の境界を照らした。
「ハルトンの蒼を護るために」
トリスが言い、足を踏み出す。
紅の輝きが迎え撃つように揺れた。
⸻
背後で、蒼晶塔が一度だけ脈動する。
街の空に蒼と紅が交じり合い、
まるで新たな時代の幕開けを告げるように。
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