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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼き都、動き出す

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蒼の秩序、紅の影

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

転送陣が光を失い、足元の感触が変わった。

 冷たい蒼の洞窟から、一瞬で温かい夜のハルトンへ。


 広場の空気は、戦いを見届けた民の熱でまだざわめいていた。

 「トリスさま!」「紅の巨人を倒したって本当ですか!」

 誰もが興奮を隠せず、蒼晶塔の光もいつもより明るい気がした。


 トリスは剣を収め、息を吐く。

「……ふぅ、地上の空気はうまいな」

「そりゃそうよ。凍るよりはずっとマシ」

 アリアが肩を回し、ミーナが笑う。

「でもね、紅晶……あれ、ただの敵じゃなかった気がするの」


「同感だ」

 トリスが頷く。

「蒼晶が紅に変わった……あの現象、何かに“感染”したような感じだった」


 ミーナは黙って手元の魔導計を見つめる。

 数値はまだ揺れている。蒼晶の波が、どこか不安定だ。

「……放っておけないわね。蒼晶塔にも似た波形が出てる」


「つまり、地上にも紅晶化の兆候が?」

「ありえる。明日、研究所で詳しく調べるわ」

 ミーナの瞳に研究者の光が宿った。


 ノクスが“ニャ”と鳴き、アージェが尾を揺らす。

 ルメナは肩の上で羽を震わせ、微かに蒼い火花を散らした。

 まるで、「急いだ方がいい」と言っているように。



 翌日。

 ハルトン魔導研究所・第一解析室。


 天井から吊るされた蒼晶灯が、規則的なリズムで明滅している。

 机の上には、討伐時に採取した紅晶片。

 ミーナがそれを魔導釜に入れ、蒼光を流し込む。


「紅晶化は、蒼晶の魔力構造が“反転”して起きる現象ね」

「反転?」

「蒼晶って、もともと“生命エネルギーの安定形”。

 でもあれが一定以上の魔力を吸収すると、内部の秩序が壊れて、

 安定から“攻性”に転じる。――それが紅晶」


「つまり、暴走ってことか」

「うん。でも、暴走にも“意志”があった。

 紅晶は明確に敵意を持って動いていた。……何かが導いてる」


 トリスは黙って顎に手を当てる。

「もしそれが自然発生じゃないとしたら?」

「外部からの干渉。……もしくは、ダンジョン深層で蒼晶そのものを“育てる”何かがいる」


「紅晶の親玉か」

「ええ。多分、まだ下にいる」


 ルメナが短く鳴いた。

 研究室の窓の外、蒼晶塔の光が一瞬だけ赤く瞬いた。

 それを見て、ミーナの表情が変わる。


「……やっぱり、塔も影響を受けてる」

「つまり、紅晶の“種”はすでにこの街にも?」

「かもしれない。けど、まだ初期段階よ。

 今のうちに原因を突き止めれば、拡大は防げる」


「なら、急ぐしかないな」

 トリスが立ち上がる。

「次の探索で、その“根”を断つ」


 アリアが弓を背負い直す。

「ふふ、結局また潜るのね」

「それが俺たちの仕事だ」

「やれやれ……領主も楽じゃないね」


 ミーナは魔導釜を閉じ、光の粒を封印瓶に集めた。

「この紅晶片、分析を続けるわ。

 でもトリス、気をつけて。紅晶は“蒼晶の影”でもある。

 つまり、あなたの力とも関係してる可能性が高い」


 トリスの表情がわずかに揺れた。

 だが、すぐに笑みを浮かべる。

「心配すんな。俺が暴走したら……お前が止めろ」

「それは――絶対に嫌」

 ミーナが小さく笑って、紅晶片を見つめる。


 淡い光が、瓶の中でゆらめいた。

 蒼と紅、その境界は薄く、今にも混ざりそうに見えた。



 その夜。

 蒼晶塔の頂で、誰もいない空に蒼光が走る。

 塔の奥で、誰も知らない“紅の脈”が、ゆっくりと息づいていた。


 ――紅晶化は、まだ終わっていない。

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