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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼き都、動き出す

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第40層 紅晶の巨人《クリム・タイタン》

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

 紅晶が、立ち上がった。


 轟音。

 洞窟の天井が軋み、蒼と紅の光が絡み合う。

 結晶が砕ける音が、まるで心臓の鼓動みたいに響いていた。


「紅晶……自分で“形”を取ってる!?」

 ミーナの声が震える。

 地脈の流れが乱れ、魔導計の針がぐるぐると回った。


 紅晶の腕がゆっくりと動いた。

 それは石ではない。

 “意志”を持つ光の塊――紅晶の巨人。


「完全に層の守護者クラスだな」

 トリスが刀《繋》を握りしめる。

 背後ではアリアが矢を番え、ルメナが蒼光を纏って浮かび上がる。

 アージェが低く唸り、ノクスが影に沈んだ。


「地上のダンジョンビュー、まだ繋がってる!」

 ミーナが叫ぶ。

「都市中が見てるわ!」


「見せつけるしかねぇな」

 トリスの口元が、わずかに笑った。


 巨人が動いた。

 足を一歩踏み出しただけで、衝撃波が洞窟を揺らす。

 蒼晶が共鳴し、紅晶の波を押し返そうとする。

 “生命”と“衝動”がせめぎ合う音が、層全体に響き渡った。


「アージェ、正面を押さえろ!」

 銀狼が咆哮を上げ、《魔障壁》が展開する。

 紅晶の拳が叩きつけられ、火花と光の波が衝突した。


「ミーナ、あの装甲を解析!」

「……紅晶が蒼晶を“取り込んでる”。つまり、蒼の波で打ち消せば裂ける!」


「了解!」

 トリスが刀を構える。

 雷が刃を包み、空気が震える。


「アリア、右腕を撃ち落とせ!」

「任せなさい!」

 弦が鳴り、矢が蒼光を引いた。

 紅晶の腕に突き刺さり、蒼の光が内部に走る。

 爆ぜた。

 紅晶の装甲が剥がれ、内部の蒼が脈動する。


「そこだ――ッ!」

 トリスが踏み込み、雷光とともに斬り上げた。

 紅晶の腕が砕け、巨人の体勢が崩れる。


 その瞬間。

 地上のダンジョンビューが閃光に包まれ、観客席が総立ちになった。

 子どもが歓声を上げ、職人が拳を突き上げる。

 「トリスだ!」「やったぞ!」と叫び声が夜空に響く。



 洞窟内では、巨人がなおも動いていた。

 傷口から溢れた紅光が蒼晶を飲み込み、再生を始めている。


「再生する……!?」

「核がまだ生きてる!」

 ミーナの声が緊張で張り詰める。


「なら、根を断つしかねぇ」

 トリスが雷を纏い、刀を地面に突き立てた。

「ノクス、影をつなげ!」

 “ニャッ!”

 影が走り、巨人の足元に網のように広がる。


 トリスの刀に雷光が奔り、影に流れ込む。

 その瞬間――影の網が蒼に染まった。


「《影走り・雷鎖》!」

 影と雷が融合し、巨人の足を縛り上げた。

 雷が走り、紅晶が軋む。


「ミーナ、今だ!」

「《蒼環展開・共鳴封止》!」

 蒼環の光が広がり、紅の波を押さえ込む。

 紅晶がきしみ、蒼の輪の中で静止する。


「アリア、仕上げて!」

「了解!」

 矢が三連射され、紅晶の胸を撃ち抜いた。

 トリスが跳躍し、雷光とともに刀を振り下ろす。


 轟音。

 紅と蒼が爆ぜ、巨人の胸に大穴が開いた。

 そこに――紅と蒼が溶け合う核が見えた。


「これが……紅晶の“心臓”か!」


 トリスは雷を一点に集束させた。

 刃が白く光り、空気が焦げる。


「――喰らえッ!」


 雷閃。

 紅晶の心臓が裂け、光が洞窟を満たす。

 紅が蒼に飲み込まれ、やがて静寂が訪れた。



 地上。

 スクリーンの光が収まり、観客たちは息を呑んでいた。

 次の瞬間、映像の中で蒼の光が静かに揺れた。


 歓声が爆発した。

 ハルトンの街に、勝利の声が響く。



 洞窟に戻る。

 紅晶の残滓が粉となって散り、蒼晶がゆっくりと光を取り戻す。

 ミーナが息をつき、アリアが弓を下ろした。

 ルメナが肩に舞い降り、柔らかく鳴く。

 アージェとノクスが寄り添い、静かに見守る。


「……終わったな」

 トリスが刀を納めた。


「紅晶の反応も沈静化。これで、この層は安定するわ」

 ミーナが魔導計を閉じる。

「地上の映像塔も正常化した。……きっと、みんな見てたわね」


「派手にやったしな」

 トリスが笑う。

「けど、これで蒼晶の流れも戻った。

 次はもっと深く――紅晶の根を、見つけに行く」


 ルメナが翼を広げ、光を散らす。

 洞窟の奥へ、蒼い道が続いていた。


「よし。行こう」

 トリスが前を向く。

 仲間たちが頷き、歩き出した。


 地上では、蒼晶塔が静かに脈を打つ。

 誰も知らない、その鼓動の奥に、次なる“紅の影”が潜んでいることを。

応援ありがとうございます!

皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و

「次話も楽しみ!」と思っていただけたら、ポチっとお星★様を押してもらえると嬉しいです!

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