紅の兆し
AIのＩＱ低下のため、リメイクしまくり１日2話ができませんでしたごめんなさい。
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足を踏み入れた瞬間、空気がざらりとした。
蒼晶の壁に包まれた通路はいつもより明るく、それでいて――どこか、ざわめいている。
耳鳴りのような音。いや、違う。蒼晶の共鳴音が濁っていた。
「……聞こえる？ この低い響き」
ミーナが足を止め、掌を壁に触れる。
指先から淡い光が滲み、蒼晶の表面が脈を打った。
「波長が乱れてる。蒼晶が“別の属性”を吸い込んでるわ」
アリアが眉をひそめる。
「吸い込むって、魔力を？」
「ええ……紅系の魔素。けど炎じゃない。もっと“歪んだ”波動」
トリスは目を細めた。
蒼晶の光が呼吸するように明滅し、ほんの一瞬だけ――紅が混じる。
その色は、血ではなく、脈動する“違和”だった。
「ここ、前来た時はこんな反応なかったよな」
「ええ。……でも今は“誰か”が、ダンジョンの底から干渉してる」
ルメナが低く鳴き、翼の光を広げる。
影の奥でノクスが毛を逆立て、アージェが一歩前へ出た。
空気が変わる。蒼の静寂に、赤い気配が混ざった。
次の瞬間、通路の奥で閃光が走った。
壁が裂け、光の粒が弾ける。
そして――紅い結晶を纏った狼が姿を現した。
紅晶狼。
蒼晶の大地を爪で削り、唸り声を上げるたびに、紅の粉塵が舞う。
その身体は半ば透明で、蒼と紅が絶えず入れ替わっていた。
生きた結晶。まるで“蒼晶そのもの”が獣の形をとったようだった。
「……こんなの、ダンジョンの資料にはなかった」
ミーナの声が震える。
「蒼晶の構成物質が、紅素と融合してる。自律再構成が始まってるのよ」
「つまり、層そのものが進化してるってことか」
「いいえ。変質よ。理を外れ始めてる」
狼が咆哮した。
紅い光が放たれ、蒼晶の壁が一斉に脈動する。
光が乱反射し、通路が血のような赤に染まった。
「アージェ！」
トリスの声に、銀狼が咆哮を返す。
《魔障壁》が展開し、波動を受け止める。紅光がぶつかり合い、空気が震えた。
「ミーナ、あの紅の波、干渉できるか！」
「試してみる！」
ミーナの足元に蒼環が展開され、光が走る。
蒼と紅が衝突し、刹那の沈黙――そして、紅晶狼の動きがわずかに鈍った。
「今だ！」
トリスが刀《繋》を抜く。雷が走り、蒼光が紅を裂いた。
アリアの矢が続き、ノクスが影の中から跳び出して急所を狙う。
アージェが正面を抑え、ルメナが頭上で光の奔流を放った。
紅と蒼が交わり、世界が眩く震えた。
そして――狼が咆哮を残して、結晶の破片となって崩れ落ちた。
残るのは静寂と、かすかな紅光。
それは完全に消えず、壁の奥でゆらゆらと揺れていた。
「……蒼晶が、紅を吐き出してる」
ミーナが囁く。
「いや、違う。まだ取り込まれてる最中だ」
トリスは紅く染まる蒼晶を見上げた。
「この層、まるで“何かに染められていく”みたいだな」
ルメナが低く鳴き、羽を広げた。
その光が蒼と紅の境界を照らし出す。
ダンジョンの奥――紅の波が、さらに深くへと流れ込んでいくのが見えた。
「進もう」
トリスが呟く。
「紅の正体を突き止めるまで、止まれない」
仲間たちは頷き、蒼晶の光に背を押されながら、さらに深くへと進んでいった。
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