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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼海に生まれた絆 ― 小さな竜

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王立魔道研究所ハルトン支部、会議にて

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

 朝日が、ハルトンの街を包んでいた。

 昨日の宴の名残か、街角では子どもたちが“雷伯さまの誕生日ごっこ”なんて遊びをしている。

 まったく、どこでそんなの覚えたんだ。


 領主館の一室――昨日まで倉庫だった建物。

 今はすっかり「研究所」と呼べる空間に変わっていた。


 壁一面の魔導図、試験管の光、魔力導線の配線。

 そして、中央の大きな机の前にミーナが立っていた。


「ふふっ……なんか、いい響きよね。“支部長ミーナ・エイル”」

 アリアが笑う。

「ふぅん、急に偉そうに聞こえるけど、顔はいつも通りよ?」

「失礼ね。これでも責任重大なんだから」

 ミーナは軽く頬を膨らませたが、どこか誇らしげでもあった。


 俺は腕を組みながら机の前に立つ。

「で――初会議ってことでいいのか?」

「そう!」ミーナが勢いよく頷く。

「今日からこの研究所の最初の研究テーマを“正式決定”します!」


「はじまったな、支部長会議」

「うん。記念すべき第一回目ね」

 アリアが椅子にどっかり座り、ノクスがその膝に飛び乗る。

 アージェは入口付近で伏せ、ルメナは棚の上からこちらを見ている。


 ミーナは小さく深呼吸をした。

 白衣の袖を整え、魔導板に光の文字を走らせる。



【王立魔道研究所ハルトン支部 第一研究議題】

・“雷と蒼の属性共鳴現象”の実証実験

・ダンジョン環境下における魔力循環の変異観測



「まず、メインテーマはこれにしたい」

 ミーナの瞳が、研究者のそれに変わる。

「トリス、あなたの雷が“蒼晶”を破壊しないどころか、共鳴して増幅した。

 この現象を解析すれば、ダンジョンの成長理論に新しい答えが出せるはずなの」


「つまり、“雷”がダンジョンに影響を与えている可能性か」

「そう。これまでの魔導理論では、相反する属性同士は干渉でしかなかった。

 でも――あなたの雷は、蒼晶を壊さず、融合した。

 あれは偶然じゃない」


 アリアが唸る。

「なるほどね。つまり、トリスの体が実験装置ってわけ?」

「実験“体”ではなく“協力者”よ」

「言い方変わっただけじゃん!」


 ルメナが“キュルッ”と鳴いて、光を散らす。

 その光が、ミーナの手元の魔導図を優しく照らした。


「次のダンジョン探索で、三十六層から四十層――“蒼鳴層”のデータを取る。

 あそこは蒼晶が“音で共鳴”する層。属性の干渉を測るのに最適よ」


「音で……?」

「ええ。蒼晶が魔力振動を音として放つの。

 理論上、雷の波長と干渉させることで、属性融合の現象を直接観測できる」


「つまり――」

 俺は苦笑する。

「また俺が雷をぶっぱなすのか」

「はい、できるだけ多く」

「……そういう予感はしてた」


 アリアがくすっと笑う。

「まぁ、爆発してもミーナが責任取るんでしょ?」

「え、トリスが爆発する前提なの?」

「大丈夫、ノクスが避ける練習してるから」

「にゃあ(やってない)」


 会議室に笑いが広がる。

 でも、ミーナの表情はやっぱり真剣だった。


「ねぇ、トリス」

「ん?」

「この研究、本気でやりたいの。

 ダンジョンを“危険な場所”じゃなく、“理を学べる場所”にしたい。

 それが私の夢なの」


 その声に、俺は小さく息を吐いた。

 ああ――この表情を見るたび、やっぱり思う。

 俺が戦う理由は、こういう奴らを守りたいからだ。


「わかった」

 俺は頷いた。

「だったら、雷を好きに使え。

 ただし、爆発したら責任取ってもらうからな」


「……そのときは、全力で看病する」

「物騒な返事だな」


 アリアが机を軽く叩く。

「よし、決まりね。“雷と蒼の研究計画”始動!」

「異議なし!」

「ワン!(アージェ)」

「にゃあ!(ノクス)」

「キュルッ!(ルメナ)」


 ミーナが笑いながらペンを取った。

 その光が魔導板に文字を刻む。


王立魔道研究所ハルトン支部 第一研究課題

『雷と蒼の属性共鳴現象の解析と応用』


 書き終えると、彼女は深く息をついた。

「――これで、正式に始まったわね」


「そうだな」

 俺は外の空を見た。

 蒼晶塔の光が、少し強く瞬いている。

 まるで、次の冒険を祝福しているかのように。



 その夜、研究所の屋根の上。

 星の下で、ルメナが静かに旋回していた。

 小さくなった光が尾を引き、空へと消える。


 ミーナがその光を見上げながら呟いた。

「……きっと、ここから始まるんだね」

 俺は頷く。

「戦うための力じゃなく、“知るための力”か。悪くない」


 アリアが笑う。

「ねぇ、次の探索、また忙しくなるわよ」

「知ってる。でも――」

 俺は微笑む。

「今度は、“学者と冒険者の旅”だ」



こうして、ハルトン支部の初研究は正式に始動した。

雷と蒼。

破壊と創造。

二つの理が交わるとき、

新しい“世界の法”が――姿を現す。

応援ありがとうございます!

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