ギルド報告
夕刻。
王都の冒険者ギルドは、今日も報告を待つ者たちでごった返していた。
酒場のようなざわめきに混じり、羽根ペンの走る音や、紙をめくる音が響く。
戦いを終えた冒険者の顔はどれも疲れていたが、それでも生還できたことが何よりの証だ。
ルークたちの班もその中に加わった。
血と泥で汚れた装備は、彼らがどんな戦いをしてきたかを雄弁に物語っている。
「おかえりなさい!」
受付嬢エレナがぱっと笑顔を見せ、心配そうに一行を見回す。
「依頼はどうでしたか?」
ルークは深く息を吸い、簡潔に答えた。
「森でゴブリンの群れを確認した。十数体と交戦し、これを撃退。ただし消耗が大きく、深入りは避けた」
「十数体も……!」
エレナの目が丸くなる。
「やっぱり群れが大きくなってるんですね。大変でしたよね……」
周囲にいた冒険者がざわついた。
「十数体だと?」「本当に新人を入れた班か?」
「群れで動くなら商隊が危ないぞ……」
エレナは小さく頷き、羊皮紙に素早く記録をとる。
「詳しい位置と数を報告に加えます。近いうちに、ギルド全体で討伐隊を編成することになるかもしれません」
「賢明な判断だ」
ルークは短く答え、視線をトリスたちに送った。
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「皆さんのおかげで、街のみんなが助かります。本当にありがとうございます!」
エレナはぱっと明るい笑顔を見せた。
そしてトリスに視線を向けて、軽く身を乗り出す。
「それに……トリス君、ちゃんと頑張れたんですね!えへへっ、すごいですよ!」
「えっ……あ、いえ。僕は……」
トリスは思わず顔を赤くし、腰の小刀を握った。
(僕がしたのは、小さな隙を作っただけ。でも、それでも……)
「冒険者にとっては、その“小さなこと”が生死を分けるんです」
エレナはやわらかく言葉を重ねる。
「だから、自信を持っていいんですよ。次もがんばってくださいね!」
背後で誰かが口笛を吹いた。
「お、子どもでも戦えるのかよ」
「ははっ、運が良かったんじゃねぇの?」
少しむず痒かったが、胸の奥に温かいものが灯った。
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報告を終えた彼らは、夜の街へと出た。
石畳を歩けば、屋台から香ばしい匂いが漂ってくる。焼き串の肉、揚げた魚、スパイスの効いた酒の香り――
戦いの緊張感から解放された街は、賑やかで温かかった。
「俺、突っ込みすぎたな」
ディルが頭をかき、ため息をつく。
「もしミーナの火球が遅れてたら、俺、腹に穴が開いてた」
「私も詠唱を急がなきゃって焦ったわ」
ミーナは真剣な目をして続けた。
「でも、トリスが石を投げてくれたから間に合ったの。あれがなかったら……」
「偶然です。ただ投げたら当たっただけで」
トリスは慌てて手を振る。
「偶然でもいい。ちゃんと“見てた”から動けたんだ」
ルークが低い声で割って入った。
「俺が保証する。あの判断は、命を救った」
トリスの胸が熱くなった。
(見てたから……僕が?)
アリアは黙って歩いていたが、一度だけ振り返り、
「止める場所を覚えなさい」
とだけ言った。
短い言葉だったが、それは確かな指導だった。
⸻
広場に差しかかると、灯火が一斉に揺れ、笑い声があちこちから響いてきた。
勝利の酒盛りをする冒険者、仲間と肩を組む兵士、露店の明かりに群がる子どもたち。
トリスはその光景を眺めながら思った。
(今日の僕は、ほんの少し役に立てただけ。でも、こうして街の人たちが笑っていられるなら……)
腰の小刀に指を添える。
小さな刃。だが、そこには確かな意味が宿っていた。
⸻
孤児院へ戻る道すがら、トリスは自分の影を見つめていた。
街灯の下で揺れる影は、少しだけ大きく見えた。
(僕はまだ弱い。でも、観察して工夫すれば仲間を助けられる。次は、もっと大きく役に立ちたい)
――守りたいものがある。
仲間も、街も、孤児院の子どもたちも。
その思いが、胸の奥に小さな炎を灯していた。
消えることのない火として。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




