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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼海に生まれた絆 ― 小さな竜

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第35層 氷亜竜《フロストレギオン》

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

空気が、凍っていた。

 息を吸えば、肺の奥が軋む。

 吐いた息は光を帯び、氷の霧となって宙に漂う。


 その中を、俺たちは進んでいた。

 足音が響くたび、床の蒼晶が鈍く脈を打つ。

 壁は鏡のように光を返し、天井からは細い氷の針が無数に垂れ下がっている。


 ――まるで、この層そのものが巨大な生き物の中のようだった。


「……これ、音が返ってこない」

 アリアが眉をひそめる。

 弓を構えながら、慎重に一歩進む。

「音の反響が消えてる。まるで空間が吸い込んでるみたい」


「魔力が飽和してる証拠ね」

 ミーナが魔導計を展開する。

 計測盤の針が狂ったように震え、数値が跳ね上がった。

「蒼晶が限界近くまで成長してる。この階層……“生きてる”わ」


 ルメナが羽音を立て、淡い光を散らす。

 ノクスが影の中から警戒の低い唸りを漏らす。

 アージェは一歩前に出て、静かに咆哮を上げた。


 その瞬間――

 空気が変わった。


 低い、うねるような震動。

 氷柱が震え、天井の氷針がぱらぱらと落ちてくる。


「来るぞ……」

 俺が刀《繋》の柄を握りしめる。


 氷壁の奥、蒼光が一斉に走った。

 地鳴り。氷が砕け、蒼晶の霧が爆ぜる。


 そこから現れたのは――

 翼のない竜。

 背中に無数の結晶を背負い、脚は太く、尾は鞭のように鋭い。


 氷亜竜フロストレギオン


 咆哮。

 空気そのものが割れるような音だった。

 蒼晶が一斉に共鳴し、足元の床が波打つ。


「な、なにこれ……地面が動いてる!」

「やつが歩くだけで、蒼晶が呼応してる……層の主ってわけか」


 竜が一歩踏み出す。

 そのたびに床が砕け、氷の衝撃波が広がった。

 アージェが即座に《魔障壁》を展開し、俺たちを守る。

 壁に衝突する氷片が火花を散らし、空気が一瞬で冷え込んだ。


「硬い……!」

「物理も魔法も通しにくいタイプね。内部で蒼晶が増殖してる」

 ミーナの分析が続く。

「つまり、内部の“核”を壊さない限り、再生する」


「核探しってわけか」

「ええ。……ただし、どこにあるかはわからない」


 ノクスが床を走る。影を線のように伸ばし、敵の下へ潜り込む。

 だが、フロストレギオンの尾が閃き、影ごと氷を薙ぎ払った。


 バシンッ!

 床が裂け、蒼晶が粉塵となって舞う。


「ノクス!」

 すぐさま影が別の場所から浮かび、ノクスが現れる。

 毛並みが逆立ち、尻尾が怒りを帯びていた。

 “ニャフッ!”と短く鳴き、再び身を低くする。


「大丈夫……けど、尾の動き速すぎる!」

「なら、アリア、遠距離から翼の根元を狙え!」

「了解!」


 弦が鳴る。矢が飛ぶ。

 だが、竜の背から放たれた氷片がそれを弾く。

 次の瞬間、床の蒼晶が“逆流”した。


「ミーナっ!」

「まずい、共鳴波が逆流してる! 層そのものが“敵”になってるわ!」


 蒼環の輪を展開し、波動を打ち消そうとするが――

 足元の氷が噛みついた。

 まるで生き物のように隆起し、ミーナの足首を絡め取る。


「きゃっ!」

「アージェ!」

 銀狼が咆哮し、牙で氷を噛み砕く。

 ミーナを引き寄せ、後方へ下がらせた。


 竜が咆哮。

 蒼い光の波が放たれる。

 ブレスではない。音そのものが魔力を伴っている――“氷鳴”。


 天井の氷針が一斉に降り注ぐ。

 ルメナが翼を広げ、光の障壁を展開。

 落下する氷を受け止め、粉々に砕く。


「トリス、やつの咆哮に蒼晶が共鳴してる!」

「つまり……“音”を媒介に動いてるってことか」

「ええ! 音が反響しないのは、やつが“吸ってる”からよ!」


 ミーナの声に、俺の脳が閃いた。

「吸ってるなら――逆に、吐かせる!」


 俺は雷を纏い、刀を握り直す。

 刃の上を稲光が走り、空気が焦げる。


「ノクス、音の影を作れ!」

 “ニャ!”

 影が四方に広がり、虚像のように“音”を放つ。

 竜の視線が惑わされる。

 アリアが一気に矢を放ち、竜の顎下を撃つ。


 瞬間、竜の咆哮が途切れた。

 床の光が弱まり、共鳴が乱れる。


「今だ、ミーナ!」

「《蒼環の理》――逆位相展開!」


 魔法陣が地面に広がり、蒼の光が逆流する。

 竜の装甲が一瞬だけ光を失った。


「行くぞッ!」

 俺は踏み込み、雷光とともに斬り上げた。

 刃が胸を裂き、内部の蒼晶が露出する。

 亀裂の中で青白い光が脈打っていた。


「これが……核か!」


 竜が吠える。

 だが、反撃の前にアージェが突撃した。

 《剛牙》が発動し、竜の首元に噛みつく。

 その瞬間、アリアの矢が続けざまに放たれ、露出した核を貫いた。


 光が爆ぜた。

 洞窟全体が白く染まり、空気が一瞬止まる。

 次いで――轟音。


 氷が割れ、光があふれる。

 フロストレギオンの身体が崩れ、蒼い粒子となって霧散していった。



 静寂。

 床の光がゆっくりと沈静化し、再び淡く明滅を始める。


 アリアが息をつく。

「……やった、の?」

「完全に消えたな」

 俺は刀を下ろし、息を吐いた。


 ミーナが倒れ込むように座り込み、苦笑を浮かべた。

「理の干渉は止まった。……この層の循環、元に戻ってる」


 ルメナが肩に降りてきて、小さく鳴いた。

 ノクスがその隣に影から現れ、尾を絡める。

 アージェは静かにミーナの背後に回り、守るように座る。


「トリス……」

 ミーナが見上げる。

「あなたの雷がなければ、今ごろ私たち……凍ってたわ」

「違う。お前が蒼環を制御したから、俺の斬撃が通ったんだ」

 俺は微笑み、剣を鞘に収めた。


 アリアが立ち上がり、肩を回す。

「まったく……。あの反射氷、矢が折れるかと思ったわ」

「おつかれ。次はもう少し軽い相手だといいな」

「そんな希望が叶うと思ってるの?」


 笑い声が小さく響いた。

 緊張がほどけると同時に、胸の奥にじんわりと温かいものが広がる。

 俺たちはまた、一つ壁を越えた。


 視線を上げると、崩れた床の奥に淡い光。

 転送陣が浮かび上がり、その中心には――

 一片の蒼い結晶が残っていた。


 ミーナがそれを拾い上げ、そっと掌で包む。

「トリス鑑定してみて」

「了解! 鑑定」


[ “レギオンコア”。亜竜が取り込んでいた力の残滓であり、フロストレギオンの力の源であった物]


「つまり、竜種の核か」

「ええ。この魔力、なんか独特の雰囲気があるわ」


 俺は頷いた。

「そうだな。なんとなく、ルメナに似てるけど」


 仲間たちがゆっくりと歩み寄る。

 ノクスが喉を鳴らし、アージェが低く唸り、ルメナが光を散らす。


 そんな中、ルメナが、レギオンコアを見つめていた。

応援ありがとうございます!

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