ハルトンへの帰還
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
ノースエンドからの帰還の風は、冷たくも優しかった。
氷冠での戦いを終え、俺たちは再びハルトンへ戻ってきた。
街の上空を覆う雲が割れ、蒼晶塔の光が夜空を染める。
その輝きが懐かしくて、けれど、どこか違って見えた。
「……ただいま、だな」
俺が呟くと、ノクスが“ニャ”と鳴き、肩の上で尻尾を揺らす。
アージェが静かに尾を打ち、ルメナが翼を小さく広げた。
ミーナとアリアも、無言で頷いている。
戦いの傷は癒えていた。けれど、心はまだ揺れていた。
両親の声。血に刻まれた宿命。
そして、封印の奥で感じた“理の歪み”。
――あのままでは終われない。
強くならなければ、誰も護れない。
⸻
夜のハルトンは静かだった。
広場の噴水に蒼晶灯が揺れ、人々は家路につき、遠く鍛冶場の槌音だけが響いている。
「みんな寝てるね」
アリアが肩の力を抜いた。
「久しぶりに、街が平和に見えるわ」
「……平和を、続けるために帰ってきたんだ」
ミーナが小さく頷く。
「ええ。あの氷冠で見たものを、私たちの手で守るのよ」
俺は空を見上げた。
星々の間に、ほんの僅か、黒い揺らぎがある。
理の歪み。魔王の心臓が、まだ完全には沈黙していない証。
だからこそ、ここで立ち止まるわけにはいかない。
⸻
翌朝。
霧が晴れる頃、俺たちはダンジョン入口に立っていた。
“蒼晶の眠る洞”
この前は俺のわがままに近い形で挑んだ。
けれど、今は違う。
領主として、そして“継承者”として戻ってきた。
「トリス、ほんとに行くの?」
アリアの問いに、俺は頷く。
「氷冠で見たあの封印……あれを維持するには、もっと強い力が必要だ。
この洞窟の奥にある“蒼晶の核”――きっと、それが鍵になる」
ミーナが手帳をめくる。
「地脈の流れが変わってる。蒼晶の成長速度が異常なの。
……もしかして、氷冠の封印と繋がってるのかも」
ルメナが空を舞い、蒼光を散らす。
ノクスとアージェが前へ進み、入口の霧がわずかに揺れる。
「“蒼晶の眠る洞 第31層”から再開だな」
俺は刀《繋》の柄に手を添える。
氷冠での戦いが、胸の奥で再び熱を帯びる。
守るために。
俺は、もう逃げない。
ミーナが微笑む。
「なら、行きましょう。辺境伯トリス・レガリオン」
「やめろ、その呼び方は重い」
「ふふっ、でも似合ってるよ」
アリアが弓を担ぎ、笑う。
「じゃ、行くか。雷伯様」
「胃が痛いって言ってるだろ」
ノクスが“にゃふっ”と鳴き、アージェが短く吠えた。
笑い声とともに、霧がほどける。
蒼の光が導くように、洞窟の奥が静かに輝いた。
「さぁ、もう一度始めよう。
今度は、この世界を護るために。」
刀を抜く音が響く。
その瞬間、蒼晶の光が強く脈打ち、洞窟の奥で何かが応えた。
まるで“蒼の理”そのものが、トリスの帰還を待っていたように。
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