凍牙の乱 ――氷原スタンピード
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
氷の洞窟は、うなっていた。
壁を走る蒼光、足元を割る氷。
封印の崩壊が呼び起こした“氷の怒り”が、音になって押し寄せてくる。
「前方、五十体以上! 数、増えてく!」
ミーナが魔導計を握りしめ、声を張り上げた。
氷狼が群れを成し、目を光らせて駆けてくる。
「くるぞ、正面! アージェ!」
俺の叫びに、銀狼が低く咆哮を返す。
障壁が展開、氷弾が叩きつけられても、波のように跳ね返す。
「アリア、上層から来る!」
「見えてる!」
アリアの弓が鳴り、矢が一閃。
氷蛇の頭部を射抜き、粉雪のように砕け散る。
「ルメナ、右側だ!」
海竜が鳴き、蒼光の奔流を吐いた。
雷光を含む潮の波が走り、十数体の魔物を一気に凍らせた。
氷が砕け、霧が舞う。
その中をノクスが駆け抜け、影の中から次々と魔物の足を断っていく。
「こっちは片付いた!」
アリアが矢を番えながら振り返る。
「ミーナ、援護魔法!」
「はい! 《蒼環の理》――流動展開!」
蒼の輪が足元から広がり、俺たちの身体が淡く光る。
体温が下がらず、動きが軽くなる。
「凍結耐性、上昇完了!」
「助かる!」
雷鳴。
俺は刀《繋》を抜き、前に出た。
刃に蒼と雷が絡み、空気が唸る。
「まとめて吹き飛ばす。アージェ、抑えろ!」
障壁が展開、氷狼の群れが弾かれる。
その隙に、俺は魔力を一点へ集中
「《雷環斬》!」
斬撃とともに稲光が走り、洞窟が白に染まる。
氷が蒸発し、雷鳴が響く。
押し寄せていた群れが、一瞬で霧散した。
静寂。
残るのは氷煙と、仲間たちの息。
「……終わった?」
アリアが矢を下ろした。
だが、ミーナが首を横に振る。
「いいえ。奥から、もっと大きい反応が――!」
ズズンッ、と地響き。
氷洞の奥が砕け、白い霧を裂いて何かが動いた。
巨大な影。
氷甲熊
いや、それよりさらに大きい。
背中に氷晶が突き出た異形の魔獣。
封域の魔力が暴走している。
「こいつ……封印の残滓を食ってる!?」
「つまり、暴走した“氷の守り手”か」
「封印が緩んで、役目を失った……厄介ね」
俺は刀を構える。
魔力が再び走る。
雷と蒼が、刃の上で交差した。
「アージェ、正面を抑えろ! ノクス、足を! アリア、背中の結晶を狙え!」
「了解!」
「“ニャッ!”」
仲間たちが動き、氷の巨獣が咆哮を上げる。
風が凍り、白い息が世界を覆う。
俺は前へ出た。
雷鳴とともに、刀が閃く。
轟ッ!
雷と氷が衝突し、光が爆ぜた。
氷の獣がのけぞる。
その胸部に、封印紋のような模様が浮かび上がった。
「そこだ……!」
俺は跳び、刃を突き立てた。
雷と蒼が交わり、封印の核が砕ける。
光が爆ぜ、冷気が一気に引いていく。
氷獣の身体が崩れ、霧の粒となって消えていった。
⸻
「……っはぁ……」
氷の洞窟が静けさを取り戻す。
アリアが弓を下ろし、ミーナが肩で息をついた。
ルメナが俺の肩に降りてきて、喉を鳴らす。
「終わった、かな?」
「いや……まだ終わってない」
俺は奥の暗闇を見た。
氷の壁のさらに奥で、微かな光が瞬いている。
「この封域……まだ、何かを隠してる」
冷たい風が吹いた。
その風はまるで
“目覚めを拒む者”の息のように、重かった。
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