氷原の門 ―眠りの咆哮
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
《雷鳴号》が大河を離れたのは、朝焼けの頃だった。
流れを失った川が氷へと変わり、そこから先は徒歩での進行となった。
見渡す限りの白。
風は音を失い、雪が横に流れていく。
空は灰色、太陽の輪郭さえ見えない。
「……ここが封域か」
俺は息を吐き、足元の氷を踏みしめた。
硬い。まるで生き物の背中のような、脈を感じる硬さだ。
ミーナが魔導計を取り出す。
「反応がどんどん強くなってる。封印の中心はもうすぐ先よ」
ルメナが俺の肩で身を震わせ、金の瞳を細める。
“キュルゥ……”
その鳴き声に、ノクスとアージェも動きを止めた。
アリアが矢筒に手を添える。
「みんな、慎重に。空気が……違う」
確かに、呼吸が重い。空気が魔力を帯びている。
世界そのものが“眠っている”ような圧を感じた。
⸻
氷原の奥へ進むと、風が止まった。
代わりに、低い鼓動のような音が大地を伝ってくる。
氷壁の中央に、巨大な紋章が刻まれていた。
円環の中に八つの蒼い宝玉。
それはまるで、王家の紋章を思わせる形。
「……これ、王家の封印術式ね」
ミーナが息を呑む。
「まさか、王都でも資料しか残ってない古代式だわ」
俺は近づき、指先で氷の表面に触れた。
その瞬間
胸の奥が、熱くなった。
「……っ!? トリス!?」
ミーナが駆け寄る。
手を離そうとしても、離れない。
氷の紋章が光を放ち、俺の掌に蒼い紋が浮かび上がった。
眩しい閃光。
身体の内側で、何かが共鳴する。
血が、騒いでいる。
心臓の鼓動とともに、氷壁全体が震えた。
雪が舞い上がり、氷の裂け目から光が溢れる。
「なにこれ……まるで、“鍵”が合ったみたい」
ミーナの声が震える。
「封印が……王家の血に反応してる」
俺の血に反応した時、氷の奥から声が響いた。
⸻
『王の子よ。目覚めの時は来た』
地が揺れる。
氷壁が崩れ、奥から巨大な影が現れる。
氷をまとった翼、山のような体躯。
その双眸は蒼の光で燃えていた。
《氷竜グラシアル》。
伝承では北の守護。だが今、その瞳には怒りが宿っている。
『久しい……血の継承者よ。王の名を継ぐ者よ』
「俺は……そんなものじゃない!」
叫んだが、竜の声は止まらない。
『否。お前の血に流れるのは“帝”と“王”の理。
汝の存在こそ、封印を解く鍵なり。』
轟音。
竜が翼を広げた瞬間、氷原が吹き飛んだ。
氷の柱が空へ舞い、冷気が世界を裂く。
「トリス! 下がって!」
アリアの声。
だが、身体が動かない。
熱と冷気が混ざり、魔力が暴走している。
ミーナが叫んだ。
「封印がトリスに流れ込んでるの! 魔力暴走寸前よ!」
俺は歯を食いしばった。
「……なら、制御してみせる」
両手を広げ、蒼と雷を纏う。
《蒼環の理》、最大展開。
光が大地を包み、氷竜の咆哮が響く。
川も風も、全てが止まる。
「俺は――誰かの血なんかじゃない。
ここで生きてきた、“俺自身”だ!」
刀《繋》を抜く。
雷と蒼が交わり、刃が光を放つ。
「行くぞ、グラシアル!」
雷鳴が轟く。
蒼い閃光が氷原を貫き、竜の胸を裂いた。
空気が爆ぜ、光が空を割る。
竜の咆哮が止み、霧散するように氷の粒となって散っていく。
風が戻り、光が空へ昇った。
⸻
静寂。
氷の大地に、俺たちの息だけが残る。
ミーナが駆け寄る。
「トリス……大丈夫?」
「ああ。……ちょっと熱いけどな」
笑うと、ミーナが安堵して肩を落とした。
アリアが空を見上げる。
「氷竜、消えたね」
「封印が解けたわけじゃない。
……威圧されただけみたい。」
ミーナの声は静かだった。
ルメナが空を旋回し、光の尾を残して降りてくる。
その翼が雪を払うたび、氷が溶けていく。
俺は空を見上げた。
遠くの雲の切れ間から、一筋の光が差し込む。
「……この力が、何であろうと。
人を護るために使う。それだけだ」
誰に言うでもなく呟くと、ルメナが小さく鳴いた。
“キュルッ”
まるで、肯定するように。
そして、トリスによって解放された氷壁に現れた何物をも飲み込まんとする暗闇を進んでいく。
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