夜明けの決意
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王の間を出た時、まだ夜は明けていなかった。
聖翼の都エルディア――王国の心臓。
塔の上で光る魔導灯が、まるで星の残り火のように瞬いていた。
胸の奥で、何かが静かに燃えていた。
それは驚きでも怒りでもなく、“繋がった”という確かな感覚。
俺の中で、これまで点だったものが線になった気がした。
「父が……帝国の皇弟で、母が王妹、か」
口にしても、まだ実感がない。
孤児院で過ごした少年の頃の俺が、それを聞いたら笑っていただろう。
――けれど今なら、受け止められる。
あの人が言っていた。
『力とは血筋のためにあるものではない。“守る”と決めた瞬間に、それが本物になる』
なら、俺はもう迷わない。
ルメナが肩で小さく鳴いた。
その体温が、妙に温かい。
まるで母親の手に触れたような、柔らかなぬくもり。
「……ありがとな、ルメナ」
軽く頭を撫でると、“キュルッ”と鳴いて目を細めた。
⸻
王都の外門に着くと、朝靄が漂っていた。
ミーナとアリアが門の前で待っていた。
ノクスは石畳の上で尻尾を揺らし、アージェは欠伸をひとつ。
「遅かったじゃない」
アリアが腕を組んで睨む。
「王様に呼ばれてたんでしょ? ついにあの話かな?」
「……ちょっと、昔話を聞いてきた」
「ふーん、“雷伯様”にも昔話があったとはね」
アリアが茶化す。
けれど、その笑いに救われた。
「北行きの支度は済んでるわ」
ミーナが書簡を差し出す。
「王都宰相府発行、氷原通行証。陛下から直接の任命……あなた、本気で行くのね」
「ああ。北の封域、異変の調査だ。
それに――答えを見つけたい」
「答え?」
「俺が、この力を何のために持ってるのか」
ミーナは少しだけ微笑んだ。
「……そっか。じゃあ、ちゃんと帰ってきて。今度は“辺境伯”として、ね」
ノクスが“にゃ”と鳴き、アージェが軽く吠えた。
朝靄の向こう、ハルトンへ続く道が見える。
「行こうか」
俺は刀《繋》の柄を軽く叩いた。
その音が合図になり、ルメナの翼がふわりと広がる。
蒼い光が霧を払い、朝の光が道を照らした。
王の秘密を知った夜のあと、
俺たちはもう一度、冒険者として――いや、“領主としての使命”を背負って、歩き出した。
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