見るだけ通いと追加依頼
あの日以来、トリスは武具市に立ち寄るのが習慣になった。
依頼の前後や休みの日でも足を運び、露店の剣や槍を「見るだけ」で振らせてもらう。
「坊主、また来たのか」
前掛け姿の親父が苦笑する。
「はい、勉強させてもらってます!」
トリスは両手で鉄剣を受け取り、軽く振った。
重い剣、軽い剣、ぶれる剣、まっすぐ収まる剣。
毎日比べるうちに、違いが少しずつ肌でわかってきた。
「力はねぇが、目は育ってるな。今度は握りを見ろ。手に馴染むかどうかだ」
親父がアドバイスをする。
「……はい!」
横でアリアが黙って見守っていた。
彼女は多くを語らない。ただ「次」と一言だけ言って別の剣を渡す。
その繰り返しが、トリスには何よりの稽古になっていた。
⸻
数日後。
トリスたちの班は報告を終え、受付嬢エレナから追加依頼を受けた。
「最近、街の外縁にゴブリンの群れが出ています。討伐というより、調査と牽制をお願いしたいんです」
「ゴブリンか。前に森で戦ったな」
ルークが腕を組む。
「数がまとまってきて、商人たちが警戒しているんです」
「偵察ついでにひと暴れ、ってやつか」
ディルがにやりと笑う。
「気を抜かないこと」
ミーナが冷たく言った。
「承知した。調査兼討伐、引き受けよう」
ルークが頷くと、トリスの胸は高鳴った。
(前よりもっと……役に立ちたい!)
⸻
その夜。
トリスが孤児院に戻ると、子どもたちが一斉に駆け寄ってきた。
「トリス! 今日は何したの?」
「また魔物やっつけた?」
「今日もね、街の用水路を掃除したんだ。枯れ葉を取ったり、流れを直したりして……途中で大きなネズミも出てきたけど、みんなで倒したよ」
胸を張って答えると、子どもたちは「へぇー!」と目を丸くした。
「すごい! じゃあ街のみんなが助かるんだね!」
「ネズミ怖くなかったの?」
「怖かったけど……仲間がいたから大丈夫だった」
トリスは笑って、それから腰の小刀を取り出した。
「そういえば、まだ見せてなかったね。これが僕の小刀だよ。今日の仕事でも役に立ったんだ」
「わぁ! 本物の刃物だ!」
「すごい、すごい!」
「これは戦うためだけじゃなくて、薬草や食べ物を切るのにも使えるんだ」
説明すると、子どもたちは「ふーん」と不思議そうに首を傾げながらも、羨ましそうに目を輝かせた。
院長のエリサが柔らかく微笑んだ。
「戦いの刃も必要。でも、生活を支える刃も大切。……トリスはいい選び方をしたね」
「……ありがとうございます」
胸の奥がじんと熱くなる。
(守りたい。ここを、みんなを、必ず守れるように……!)
⸻
翌朝。
新しい依頼――ゴブリン群の調査に出発する準備を整える。
トリスは木剣を握り、小刀の感触を確かめた。
(今度こそ、もっと役に立つ。必ず……!)
青空の下、王都を背にした街道が真っ直ぐに続いていた。
その先で、まだ見ぬ敵と試練が待ち構えている。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




