雷の船、レガリオン号 出航
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
朝のハルディア港は、まるで祝祭だった。
波止場には王国旗とレガリオン家の紋章旗が並び、
潮風の中で金の帆布が眩しく光っている。
太陽からの反射光が水面に踊り、
海全体が青く脈打って見えた。
「……見事なもんだな」
俺は桟橋に立ち、目の前の巨船を見上げた。
“雷の船”と呼ばれる新造船――《レガリオン号》。
全長百二十メートル、最新の動力炉を搭載した初の航行艦。
この船が、王都と南方を結ぶ“蒼晶航路”の起点になる。
「トリス。帆の魔導符、こっちで最終調整できたわ」
アリアが弓を背に、軽やかに報告してくる。
袖をまくってるせいで、いつもより冒険者っぽい。
「帆の張力は雷の導線と連動してる。
もし異常電流が走ったら、自動で“解放”されるようにした」
「流石だな。風も雷も、任せた」
「ふふ、褒めるの遅い」
ノクスがマストの影を登り、鳴いた。
“ニャッ”という短い声。
見張りの合図だ。港の上空まで、異常なし。
⸻
「積荷完了。アント素材、蒼晶原石、海塩、織布、それに、王都宛ての贈答箱です」
ミーナが帳簿を抱えて現れた。
髪をひとつにまとめ、白い指で印を押していく。
「それと、臨時の契約書。王国宰相府からの輸送許可証。
期限は一年。更新には“雷の辺境伯”の印が必要」
「……もうその呼び名が公文書に載ってるのか」
「誇りなさい。王が名付けた称号よ」
「胃が痛い」
アリアが吹き出した。
「胃痛の雷伯、決定ね」
「やめろ」
ノクスまで“にゃふっ”と鳴く。悪ノリが止まらない。
⸻
「出航準備、整いました!」
水夫たちの声が港に響く。
ロープが外され、帆が上がる。
雷導符が光り、マストの上で青白い稲光が走った。
動力炉が唸りを上げる。
「では、宣言を」
ミーナが頷き、俺の前に立った。
アリア、ノクス、アージェが並ぶ。
俺は刀《繋》の柄に手を添え、声を張った。
「ハルディア=レガリオン航路、これより開通!
王国南門より、雷の守りと蒼の祝福をもって、出航せよ!」
号鐘が鳴る。
船体がゆっくりと海を滑り、蒼い波を割った。
帆に映る雷光が、雲の切れ間を走る。
⸻
「ねぇ、これって……戦の時より緊張するね」
アリアが笑う。
「命を奪うんじゃなく、動かすからな」
「そうね。守るのって、重いけど温かい」
ミーナが小さく微笑んだ。
アージェが甲板に座り、潮風を嗅いで尾を振る。
ノクスはマストの上で、海の彼方を睨んでいた。
「……見張り?」
ノクスが短く“ニャ”と鳴いた。
その視線の先、南の水平線。
遠くで、一瞬だけ黒い影が揺れた。
「……あれ、船か?」
「波の形が違うわ。……潜ってる?」
ミーナが眉を寄せ、帳簿を閉じる。
アリアは弓を持ち上げた。
「何か来る」
次の瞬間、海面が爆ぜた。
水柱が上がり、銀色の何かが跳ねた――
「……魔物か!?」
「わからない、なんだろ?」
波間から一瞬現れたのは、見たこともない巨大な何かだった。
「あんな大きいの、王国にも記録がない……」
ミーナの声が震えた。
海風が止む。
雷光が帆を照らし、海面が青白く光る。
「面白くなってきたな」
俺は刀の柄を握り、笑った。
「初航路で遭遇戦とは……さすが俺たちだ」
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