ハルトンに響く鐘、再び動き出す領地
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王都を発って三日。
馬車の窓から見える大地が、ようやく懐かしい色に戻ってきた。
山の稜線、霧を抱く森。ハルトンだ。
「ふあぁ……やっぱり、この空気が落ち着くね」
アリアが大きく伸びをして、馬車の窓から顔を出した。
「空気まで鍛冶の匂いがするの、ハルトンくらいよ」
ミーナが書類の束を抱えたまま苦笑する。
「おかえりなさい、トリス様!」
街門の警備兵たちが整列して迎えてくれた。
ノクスは嬉しそうに尻尾を立て、アージェは鼻を鳴らして駆け出す。
……この景色、何度見ても胸にくる。
俺が“初めて領主になった街”だ。
⸻
転送広場を抜けると、活気の波。
商人の声、鍛冶場の槌音、蒼晶の光。
以前より明るい
それもそのはずだ。
港との交易が始まり、ハルトンはまるで新しい心臓を得たみたいに脈打っている。
「おかえりなさいませ!辺境伯様!」
「ハルディアの魚、届きましたよー!」
「蒼晶ランプ、注文入ってます!」
あちこちから声が飛ぶ。
「すごいわね……完全に都市だわ」
ミーナが感嘆の息を漏らす。
「領都ハルトン、名実ともに私達の首都よ」
「そして次はハルディア港を繋ぐ。大変だな」
「ええ。あなたが夜更かしして書類にハンコ押す姿が目に浮かぶわ」
「やめてくれ」
ノクスが“にゃっ”と鳴き、まるで「確定だにゃ」と言わんばかりだ。
⸻
領主館に戻ると、既にメンバーが集まっていた。
鍛冶師カイン、温泉街からの使者、グレインハルトの農師たち。
そして、ロックハルト森林街の代表たち。
「トリス様、お帰りなさい!」
「王都の披露宴、聞きましたぞ!」
「“雷神様”だってさ!」
「やめてくれ、その呼び名……」
笑い声が広間に広がる。
でも悪くない。
あの戦いの重さが、今ではこうして笑い話になってる。
⸻
「さて、戻ったばかりで悪いけど、会議始めよう」
俺は地図を広げた。
中央にはハルトン、南西にハルディア港、東に温泉郷、北に森林街と南に穀倉街。
すでに“レガリオン領”は五つの都市を束ねる大領地だ。
「まず、ハルディアとの連絡路。
川沿いに新しい道を造る。橋は三ヶ所。防壁付きだ」
「物資輸送は?」
「港から馬車隊を出す。交易税は一部減免、代わりに蒼晶の納入を義務化する」
「治安は?」
「民兵の訓練を再開。アージェ、君にも手伝ってもらう」
“ウォン”と低い返事。頼もしすぎる。
ミーナが書状を広げる。
「宰相府から正式通達がきたわ。ハルディア港の自治章程が承認されたわ。あと、雷の盟約、正式に法文登録」
「もう法に載ったのか……仕事が速い」
「オルヴィウス閣下、やることが早すぎるのよ」
アリアがくすっと笑う。
「でも、これで本当に“照らす雷”になったね」
⸻
会議が終わるころには、外が夕焼けに染まっていた。
蒼晶塔の光が反射し、街全体が柔らかい青に包まれる。
…やっぱり、ここが俺たちの“始まり”だな」
俺が呟くと、ミーナが微笑んだ。
「そうね。だけど“終わり”でもあるわ。子爵領の時代は」
「……なるほど。辺境伯領の幕開け、か」
アリアが立ち上がる。
「だったら、乾杯しなきゃでしょ?」
「パンとスープで?」
「うん、それで十分」
ノクスが喉を鳴らし、アージェが尾を一度振る。
鐘の音が鳴った。
ハルトンの一日を締めくくる、穏やかな音。
だがその音は、新しい時代の始まりを告げる鐘でもあった。
雷の辺境伯、トリス=レガリオン。
その名の下に、領都ハルトンは再び動き出す。
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